【使用貸借】使用貸借の借主の原状回復義務は通常損耗にまで及ぶか?損害賠償請求権等の期間は?

父から強く言ってもらって、従妹もようやく貸していた家から出て行ってくれたんですが、家の中がかなり汚れています。ハウスクリーニングを業者にお願いして、費用負担を従妹にお願したのですが、通常損耗だから、自分には責任がないと言って支払いをしようとしません。
支払をしてもらうことは法的に無理なのでしょうか?

使用貸借契約の場合も、借主は、原状回復義務を負うことが規定されています。
また、この場合の原状回復義務の範囲は、賃貸借契約の場合と違って、通常損耗も含まれますので、法的には、従妹に、原状回復義務の履行の一環として、ハウスクリーニング代の請求も可能です。

借主による収去等

旧民法では、使用貸借が終了した場合の借主の義務について、「借主は原状に復して、これに附属させた物を収去させることができる」として、原状回復義務は定めていましたが、附属物の収去については、権利として認めているのみで、義務規定ではありませんでした。
改正法では、借主の収去義務、並びに、原状回復義務について定めています。

原状回復義務については、「損傷」が、借主の責めに帰することができない事由によるものであるときには、責任を負わないことを明記しています。

原状回復義務の範囲

なお、原状回復義務の範囲について、賃貸借契約では、「損傷」について、「通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗並びに賃借物の経年変化を除く」と定め、通常損耗、賃借物の経年変化を含まないことを明らかにしていますが、使用貸借契約では、このような限定がなされていません。
よって、使用貸借契約の原状回復義務の範囲は、通常損耗、経年変化という限定なく、すべてを原状に戻すことになります。

(借主による収去等)
第五百九十九条 借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物がある場合において、使用貸借が終了したときは、その附属させた物を収去する義務を負う。ただし、借用物から分離することができない物又は分離するのに過分の費用を要する物については、この限りでない。
2 借主は、借用物を受け取った後にこれに附属させた物を収去することができる。
3 借主は、借用物を受け取った後にこれに生じた損傷がある場合において、使用貸借が終了したときは、その損傷を原状に復する義務を負う。ただし、その損傷が借主の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

損害賠償及び費用の償還の請求権についての期間の制限

契約の本旨に反する使用または収益によって生じた損害については、実際の用法違反が生じた時が、消滅時効の起算点となりますが、貸主が、それを知るのは、実際に、賃借物の返還を受けた後です。
そこで、改正民法では、損害賠償請求権について、「貸主が返還を受けた時から一年を経過するまでの間は、時効は、完成しない」と定め、時効の猶予完成を認めています(600条2項)。

ただし、同時に、損害賠償請求権について、「貸主が返還を受けた時から一年以内に請求しなければならない」と定めていますので、返還を受けてから、1年以内に行使しない場合は、請求ができないことになるので、注意が必要です(600条1項)。

なお、借主の費用償還請求権も、同様に、1年以内に請求することが必要です。

(損害賠償及び費用の償還の請求権についての期間の制限)
第六百条 契約の本旨に反する使用又は収益によって生じた損害の賠償及び借主が支出した費用の償還は、貸主が返還を受けた時から一年以内に請求しなければならない。
2 前項の損害賠償の請求権については、貸主が返還を受けた時から一年を経過するまでの間は、時効は、完成しない。

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