【おすすめ漫画】漫画喫茶と著作権

楯岡さん

とら先生、漫画喫茶とかって、漫画を貸し出しているように思えるんだけど、著作権料って支払う必要あるんですかね。

とら先生
著作権法の貸与権の問題ですね。
著作権法第26条の3は、「著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。)を・・・貸与により公衆に提供する権利を専有する。」と定めています。つまり、著作者が、著作物の貸与権を専有しているため、漫画喫茶も、漫画本を「貸与」していると評価できるのであれば、著作権使用料の支払いが必要ということになります。
ただ、現状では、漫画喫茶のように店内で読ませる場合は、漫画本の占有はお客ではなく、漫画喫茶にあるから「貸与」といえない、よって、貸与権には反しないとされているんです。

貸与権とは

著作権法は、第26条の3で、「著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。)を・・・貸与により公衆に提供する権利を専有する。」と定めており、これが貸与権です。

つまり、著作物については、著作者のみが、一般の人に対して、貸し出しをする権利を有していることになります。

(貸与権)
第二十六条の三 著作者は、その著作物(映画の著作物を除く。)をその複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあつては、当該映画の著作物の複製物を除く。)の貸与により公衆に提供する権利を専有する。

貸与権の制定経緯

漫画喫茶のみならず、古き良き定食屋、理容室には、漫画本が置いてあって、自由に読むことができました。
今、考えると、お客さんの暇つぶし目的とはいえ、商業利用目的で、漫画本を置いている以上、著作権者に使用料の支払いをしているのか、気になるところです。

そもそも、現行の著作権法は、旧著作権法全部を、1970年(昭和45年)に改正して制定されましたが、当初、貸与権については制定されていませんでした。

貸与権が盛り込まれたのは、1984年(昭和59年)です。
貸与権が制定された経緯は、当時、レンタルレコード業の隆盛により、レコードを買うのではなく、レコードを借りて、テープにダビングすることで、レコードの売上が低迷したことへの対応が必要となったためです。
そのため、制定当初は、書籍・雑誌に関しては適用外とされていました。

つまり、この頃は、著作権者の許諾を得ることなく、誰でも自由に、漫画本の貸し出しをして利益を得ることができていたということになります。

しかし、2005年(平成17年)に、書籍・雑誌についても貸与権が適用されることになり、非営利かつ無料の場合を除き、著作権者の許諾ない場合は、書籍・雑誌を貸与することができなくなりました。

漫画喫茶は著作権を侵害しないのか。

漫画喫茶の事業が、貸与権に反しないかは、反対説もあるようですが、著作権に反しないとするのが、通説です。
というのも、漫画喫茶は、店舗内で、お客に漫画を読ませているだけなので、漫画本の占有は、お客にではなく、店舗にあるから、「貸与」にはあたらない、という理屈です。

これに対し、漫画本の占有が、お客に移るのが、レンタルコミック店。こちらは、著作使用料が発生します。

21世紀のコミック作家の会

2000年(平成12)年4月26日、21世紀のコミック作家の会(旧称:21世紀のコミック作家の著作権を考える会)が設立されました。
設立趣旨の「新古書店と呼ばれる大型二次流通店の増加、コミック喫茶と称される施設の拡大は、漫画文化の発展を考えるうえで、大きな問題をはらんでおります」との記載を読めば分かる通り、漫画喫茶等の業界に対し、著作権者の団体として、対応しようとして設立されたことが分かります。

そして、2003年(平成15年)5月15日、21世紀のコミック作家の会と、日本複合カフェ協会(JCCA/Japan Complex Cafe Association)及び一般社団法人日本雑誌協会の間で暫定合意が成立して現在に至っています。

暫定合意書には、カフェ協会が、カフェ協会に加盟する店舗内におけるコミックスの使用によって得られる対価の一部を、漫画文化の発展のために還元することを合意し、その還元方法について協議をすることを定めています。

この後、2004年(平成16年)6月3日、著作権法が改正され、2005年(平成17年)1月1日施行され、書籍・雑誌についても貸与権が適用されました。結果的に、レンタルブック事業については、2007年(平成19年)2月1日、使用料規定に基づく運用が開始されています。

しかし、漫画喫茶については、法的規制がなく現在に至っており、今後、どうなっていくのか気になるところです。

とら先生ぷちコラム

漫画が大好きな私としては、漫画家の収益のために、ポチっと電子書籍にて、漫画本を購入していますが、学生時代は、試験勉強の息抜きに、漫画喫茶に通うこともよくありました。
漫画喫茶で読んだ本をきっかけに、漫画本を買う人もいるという意見もありますが、学生時代の私は、金銭的な余裕もなく、買わなかったような気もします。

法律的な占有の移転がないことで、漫画喫茶は、著作権法の規制対象から外れました。
21世紀コミック作家の会の設立経緯、暫定合意、著作権法改正の流れからすると、当然、著作者側からすれば、漫画喫茶対策も含めて著作権法の改正に至ったと考えたのではないかなと思わずにはいられません。

法律の制定、改正も、その必要性が認められてこそ。
今後、著作者の権利を認め、漫画喫茶にも使用料の支払いを求めるような改正がなされるときがくるかもしれませんね。

文書作成者

佐藤 嘉寅

弁護士法人みなとパートナーズ代表

プロフィール

平成16年10月 弁護士登録
平成25年1月 弁護士法人みなとパートナーズを開設
得意分野:企業間のトラブル、債権回収全般、離婚、相続、交通事故、刑事弁護、サクラサイト被害などの消費者問題にも精通

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