【混合寄託と消費寄託】特殊な寄託類型

混合寄託

混合寄託とは、受寄者が複数の寄託者から同じ種類・品質の物の寄託を受けて混合して保管し、寄託された物と同じ数量の物を返還する契約をいいます。
例えば、石油・酒類で見られる寄託の類型です。
混合寄託については、旧民法では規定がありませんでしたが、実務上認められており、明文化されました。

通常の寄託契約と異なる点

通常の寄託契約と異なる点は、寄託物と同一の物を返還する義務を負わない点です。

消費寄託と異なる点

消費寄託と異なる点は、寄託物の処分権を受寄者が有しない点です。

混合寄託の要件

混合寄託をするためには、①寄託物の種類及び品質が同一であること、また、②寄託者全員の承諾を得る必要があることです。

混合寄託の効果

混合寄託の場合、寄託者は、寄託物と同じ数量の物の返還を請求することができます。

また、寄託物の一部が滅失し、寄託者にすべての寄託物を返還することができなくなった場合には、寄託者は、受寄者に対し、混合して保管されている総寄託物に対するその寄託した物の割合に応じた数量の物の返還を請求することができます。また、寄託者は、受寄者に対し、損害賠償を請求することができます。

(混合寄託)
第六百六十五条の二 複数の者が寄託した物の種類及び品質が同一である場合には、受寄者は、各寄託者の承諾を得たときに限り、これらを混合して保管することができる。
2 前項の規定に基づき受寄者が複数の寄託者からの寄託物を混合して保管したときは、寄託者は、その寄託した物と同じ数量の物の返還を請求することができる。
3 前項に規定する場合において、寄託物の一部が滅失したときは、寄託者は、混合して保管されている総寄託物に対するその寄託した物の割合に応じた数量の物の返還を請求することができる。この場合においては、損害賠償の請求を妨げない。

消費寄託

消費寄託とは、受寄者が、受寄物を消費して、これと同じ種類・品質・数量の物を返還すればよい寄託契約をいいます。
例としては、銀行預金です。

消費貸借契約の準用条文の変更

旧民法では、消費寄託と消費貸借が、寄託物及び目的物の処分権が移転する点が類似することから、ほとんどの消費貸借の条文を準用していました。
しかし、消費貸借が、専ら借主側の利益のためのものであるのに対し、消費寄託は、専ら寄託者側の利益のための契約であることから、準用する条文は、貸主の契約不適合責任を定めた改正民法590条と、受寄者の価額償還の義務を定めた592条のみ準用されることになりました。

預貯金契約については、返還時期の定めに関わらず、いつでも返還できると規定されています。

(消費寄託)
第六百六十六条 受寄者が契約により寄託物を消費することができる場合には、受寄者は、寄託された物と種類、品質及び数量の同じ物をもって返還しなければならない。
2 第五百九十条及び第五百九十二条の規定は、前項に規定する場合について準用する。
3 第五百九十一条第二項及び第三項の規定は、預金又は貯金に係る契約により金銭を寄託した場合について準用する。

文書作成者

佐藤 嘉寅

弁護士法人みなとパートナーズ代表

プロフィール

平成16年10月 弁護士登録
平成25年1月 弁護士法人みなとパートナーズを開設
得意分野:企業間のトラブル、債権回収全般、離婚、相続、交通事故、刑事弁護、サクラサイト被害などの消費者問題にも精通

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