【寄託契約】相続人から登記識別情報通知を預かった受寄者が不動産の真の所有者と名乗る者から引き渡しを求められた場合の通知義務と対応方法

小林彰先生

遺産分割と相続登記のご依頼で、相続人の長女Aから、相続人間で遺産分割協議がまとまるまで、登記識別情報通知を預かってほしいと頼まれて預かっています。先日、被相続人Bの生前に、Bから不動産を購入したというC会社があらわれて、私に登記識別情報通知を引き渡せと言ってきたのですが、応じる必要はありませんよね?

小林先生と長女Aとの間で、登記識別情報通知について寄託契約が成立しているので、C会社からの引渡し請求に応じる必要はありません。あくまでも、不動産の帰属がどうなるかは、長女Aを含む相続人らとC会社との間での争いになります。万一、C会社から小林先生が訴えられた場合は、訴えられた事実をAに通知してください。訴えられても、Aに返還すれば良いです。

第三者から訴え提起等をされたときの受寄者の通知義務

旧民法では、寄託物について権利を主張する第三者が受寄者に対して訴えを提起し、又は差押え、仮差押え若しくは仮処分をしたときは、仮に、寄託者がそのことを知っていたとしても、通知しなければならないことになりますが、それは迂遠のため、改正民法では、寄託者が知っているときは、通知する必要がないとされました。

第三者が寄託物について権利を主張する場合の受寄者の対応の明文化

受寄者は寄託者へ返還すれば足りる

第三者が寄託物について権利主張する場合であっても、受寄者は、寄託者の指図がない限り、寄託者に寄託物を返還しなければならないと規定されました。つまり、第三者に対しては引渡しを拒絶し、寄託者に返還すれば足りることになります。
この第三者が、寄託物について真の所有者であっても関係なく、当該第三者に損害が生じても、受寄者が責任を負うことはありません。

寄託者への通知及び第三者への引渡しを命じる確定判決により第三者への返還でもOK

受寄者が第三者によって訴え提起等をされたことを寄託者に通知し、または寄託者が知っていた場合において、寄託物を第三者への引渡しを命じる判決が確定したときは、受寄者は第三者に寄託物を引き渡すこともできます。これにより、寄託契約上の寄託者への返還義務を免れます。

(受寄者の通知義務等)
第六百六十条 寄託物について権利を主張する第三者が受寄者に対して訴えを提起し、又は差押え、仮差押え若しくは仮処分をしたときは、受寄者は、遅滞なくその事実を寄託者に通知しなければならない。ただし、寄託者が既にこれを知っているときは、この限りでない。
2 第三者が寄託物について権利を主張する場合であっても、受寄者は、寄託者の指図がない限り、寄託者に対しその寄託物を返還しなければならない。ただし、受寄者が前項の通知をした場合又は同項ただし書の規定によりその通知を要しない場合において、その寄託物をその第三者に引き渡すべき旨を命ずる確定判決(確定判決と同一の効力を有するものを含む。)があったときであって、その第三者にその寄託物を引き渡したときは、この限りでない。
3 受寄者は、前項の規定により寄託者に対して寄託物を返還しなければならない場合には、寄託者にその寄託物を引き渡したことによって第三者に損害が生じたときであっても、その賠償の責任を負わない。
とら先生ぷちコラム
ある人から物を預かっている場合、その物が、保管を依頼した人の物ではなく、第三者の物であるといったケースが生じることがあります。客観的に真実の所有者から返還を求められた場合、受寄者がどのような対応をとれば良いのか、旧民法では、はっきりとは定められていませんでしたが、強制執行などにより強制力をもって返還を求められない限り、これを拒絶しなければならないと考えられていました。
ただ、一般の人は、真実の所有者であるという第三者から返還を求められれば、返還をしても良いものかどうか迷う人も多いでしょう。そこで、改正民法では、寄託契約の当事者である寄託者に返還すれば足りるとし、第三者から訴えられた場合で、そのことを寄託者に通知し、または、訴えられた事実を寄託者が知っており、かつ、第三者に引き渡しを命じる確定判決があった場合は、第三者に寄託物を引き渡しても良いものとされました。
受寄者は、寄託者の承諾なく勝手に、第三者に寄託物を返還すると、債務不履行による損害賠償責任を負うことになりますので注意しましょう。他方、寄託者に返還する限り、第三者が真実の所有者であっても、第三者に対し損害賠償責任を負うことはありません。
 

今回の質問者はこちらの方

大田区で一番有名な司法書士を目指す小林彰先生
すでに達成している気もします。
私も参加している麻婆の会の事務局長(実質的なトップ)をつとめ、プライベートでも仲良くさせていただいているイケてる司法書士です。

※ 質問内容は架空のものです。

小林 彰

大田区で一番有名な司法書士

司法書士事務所ワン・プラス・ワン 代表司法書士

相続に強い司法書士

大田区池上にて、地域密着型の司法書士として営業しております。
相続に強い司法書士事務所です。
相続手続・トラブル対応・会社法人登記・契約・債権回収・事業承継対策・不動産購入,贈与など、ベストなサポートを提供いたします。
弁護士・行政書士・税理士・社労士など、各種専門家と相互連携しておりますので、悩みの内容・エリアにあった万全のサービスを提供いたします。

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文書作成者

佐藤 嘉寅

弁護士法人みなとパートナーズ代表

プロフィール

平成16年10月 弁護士登録
平成25年1月 弁護士法人みなとパートナーズを開設
得意分野:企業間のトラブル、債権回収全般、離婚、相続、交通事故、刑事弁護、サクラサイト被害などの消費者問題にも精通

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