◆ 小伝馬町「食堂うなり」訪問記(2025年皐月)

先日、中学時代の友人であり、俳優の村上新悟君と一緒に、東京・小伝馬町の【食堂うなり】を訪ねました。

この店を初めて訪れたのは兄に連れてきてもらったのがきっかけでしたが、すっかり魅了され、今では定期的に通うお気に入りの一軒になっています。
なんといっても、実質“日本酒飲み放題”付きのコース料理が魅力。
そして、事務所から徒歩20分という立地も“ベスコングルメ”として高ポイントです。

この日のコース料理も、期待を裏切らない充実ぶり。
目の前に現れるのは、選りすぐられた一皿ずつ。
選べないなら、流れに身を任せるのが一番かもしれない。

【酒肴三点盛り:もずく酢・つぶ貝・煮豚】

まずは静かに登場した、冷酒のグラスにも似た盃に盛られた「黒もずく酢」
つるりとした喉ごしに、ほんのり香る磯の気配──舌のスイッチがふっと切り替わる。

横に添えられたのは、旨みをしっかりと蓄えた「磯つぶ貝の旨煮」
ひとくちで口中に広がる海の香りと柔らかな食感に、思わず顔がほころぶ。

そして、まるで角砂糖のように端正なかたちをした「地穴子の煮こごり」
見た目に反してくどさはなく、醤油と出汁のバランスが絶妙。
穴子の身が口の中で静かにほどけていく。

この三品だけで、すでに“この店は本物だ”と確信できるほどの完成度。
ここからの展開に、自然と期待が膨らみます。

【笑四季 Sensation】

最初の三点盛りに寄り添ったのは、滋賀・笑四季(えみしき)酒造の「Sensation」

その名のとおり、一口目から感覚を刺激するようなフレッシュな香りと、滑らかで芯のある味わい。
純米ならではのやわらかな旨味がありながらも、甘すぎず、後味は意外なほどキリリと引き締まる。
もずく酢や貝類、角煮など、出汁と素材の旨味を引き立てるバランスの良さ。

酒器を傾けるたび、料理との相性の良さに思わず頷く──
まさに“はじめの一献”として、完璧なスタートダッシュ。
早くも、「Sensation」のお替わりをしてしまいました。

【蛤とあおさの茶碗蒸し】

器のふたを開けた瞬間、ふわりと潮の香りが立ちのぼる。
とろりとした出汁をたたえた茶碗蒸しの上には、肉厚の蛤とあおさ海苔──
春の海をそのまま閉じ込めたような、清らかでやさしい一品。

蛤の旨味は濃厚ながらも上品で、あおさのぬめりと磯の香りが、口の中でふわっと広がる。
上に添えられた小さな花穂紫蘇が、見た目と味の両方に繊細なアクセントを添えていた。

ほんのり温かく、心もほぐれる。
「いい夜になりそうだ」と、確信を持たせてくれる料理でした。

【あおり烏賊と芽ネギのひと口寿司】

ほどよく寝かせたあおり烏賊が、白ごはんの上にふわりと乗る。
香り高い芽ネギとごまの風味が、イカの甘みを引き立て、
見た目も味わいも、静かに“和”を感じさせるひと品でした。

【栄光冨士 風刃(ふうじん)】

山形の酒蔵が誇る「栄光冨士」シリーズから、香り高き一本──
その名も《風刃(FUJIN)》。

ラベルの意匠からも感じられるように、キレのある飲み口と、
風のようにすっと引く後味が特徴の純米酒。
程よく冷やされた状態で供され、食中酒としてのポテンシャルを存分に発揮していた。

蛤の椀物やあおり烏賊の一口寿司にもよく寄り添い、
料理の旨味を引き立てながら、口の中をさらりとリセットしてくれる。
余韻が短く、杯が進むタイプ。

まさに“名脇役”という表現がふさわしい一杯でした。

【鰹の漬け 香味野菜添え】

しっかりと漬けにされた鰹は、旨みが凝縮して濃厚な味わい。
みょうがとカイワレが、爽やかなアクセントを添えてくれて──
「もう一口だけ」と言い訳しながら、箸が止まりませんでした。

【寸鉄(すんてつ)純米 超辛口】

すっと通り抜けるキレのある辛口。
料理の余韻を邪魔せず、しっかり受け止める懐の深さ。
鰹の漬けのような濃い味わいとも好相性で、口の中を一度リセットして、次の一口へと誘ってくれる──そんな食中酒の理想形でした。

【平目の薄造り】

薄く透けるような白身の美しさ。
一口、口に含むと、驚くほどなめらか。
噛むほどに広がる甘みと、ほのかな磯の香り。
下に敷かれた海ぶどうのプチプチとした食感がアクセントになり、ただ上品なだけで終わらない、五感に残る体験を演出してくれる。

【金目鯛のお吸い物】

澄んだ出汁に浮かぶ金目鯛のの切り身と細く刻まれた薬味──
シンプルながらも、香りと旨みでしっかり主張してくる、そんな一椀。
脂ののった金目鯛が、すっと出汁に馴染み、後口はすっきり。
ここまでの料理と日本酒の流れを、いったん整えてくれる“休符”のような存在でした。

【獅子の里(Shishi no Sato)純米】

石川県・松浦酒造が醸す純米酒「獅子の里(Shishi no Sato)
どっしりとした旨味の中に芯のあるキレを併せ持ち、食中酒としてのポテンシャルは申し分なし。
平目のような淡白で繊細な白身魚にもよく合い、ペアリングとしては抜群のバランス。

【真あじのフライ】 

外はカリッと、中はレア──
アジの旨みと甘みがじゅわっと広がる至福のレアあじフライ。
火入れの絶妙さにうなりたくなる、食堂うなりの真骨頂です。

衣は軽くて油切れもよく、薬味の香りやタルタルの酸味と合わさることで、
一口で多層的な味わいが広がります。まさに“もう一口食べたい”戦略の真打。

【播州一献(ばんしゅういっこん)純米】

兵庫県・山陽盃酒造の代表銘柄で、しっかりとした旨味とキレの良さ。
口の中のあじフライの脂を、すっきりと流してくれます。
料理の余韻を邪魔せず、むしろ引き立ててくれる。
そんなペアリングの妙が光ります。
まさに「一献(いっこん)」の名にふさわしい、穏やかで奥深い味わいでした。

【蛸の旨煮】

しっかり味のしみた「蛸の旨煮」。
プリプリとした食感が心地よく、噛むほどに旨味が広がる逸品。
昆布や醤油の出汁がやさしく効いていて、日本酒との相性も抜群。
添えられたわかめも、磯の香りと心地よい歯ごたえを加え、小鉢ながらも丁寧な仕込みが感じられる一品でした。


【群馬泉 舞風(山廃酛純米)】

群馬県島岡酒造の群馬泉 舞風(山廃酛純米)。
落ち着いた旨味と穏やかな酸味。クラシカルで芯のある味わいが、蛸の旨煮とよく合います。
余韻のふくらみに、どこか懐かしさも感じさせる一杯です。

【つぶ貝の旨煮串】

コリコリとした食感に、ほんのり甘辛い煮汁の風味が染み込んでいて、日本酒との相性は抜群。
「群馬泉 舞風」のように落ち着きのある山廃純米酒と合わせると、貝の旨みがふくらみ、余韻を長く楽しめました。
こういう一品が出てくると、「良い店に来たな」と実感する瞬間ですね。
この時点で、すでにかなり飲んでいます。

【鰯の梅煮】

脂ののった鰯に、梅の爽やかな酸味がじんわりと染み込み、口に入れた瞬間にほろりとほどける絶妙な火入れ。
青ねぎの香りがアクセントとなって、味わいに立体感を与えてくれます。
これもまた、しっかりした純米酒と合わせると、煮汁の甘酸っぱさと魚の旨みがぐっと引き立ちます。
地味に見えて、手間のかかった一皿。
また、日本酒が進んでしまいます。


【土鍋炊き立て銀シャリ】

粒立ちの美しいお米は、ふわっと立ちのぼる香りからして格別。
一口頬ばれば、やわらかな甘みとともに、しっかりとした旨みが広がります。

コースの締めにこのご飯が出てくると、「最後まで手を抜かない」お店の矜持を感じます。
シンプルだけど、だからこそ誤魔化しのきかない一品──銀シャリがうまい店は、間違いない。

日本酒好きにはたまらない構成で、料理は少量ずつ、絶妙なペースで供されるのが嬉しい。
ついつい、一献また一献と杯を重ねてしまいます。
仕方ないです。
そこに、絶妙に日本酒と合う美味しい肴があるのですから。


【俳優・村上新悟という存在】

この夜、久しぶりに語らった村上新悟君は、近年の活躍が目覚ましい俳優。

大河ドラマ『真田丸』で、上杉家家老・直江兼続を演じ、その重厚な演技と「イケボ」で一気に注目を集めた実力派であり、仲代達矢氏主宰の無名塾出身。
舞台・映画・ドラマと幅広く活躍しながら、どこか朴訥とした人柄は昔のまま。
そんな彼と並んで食卓を囲めるのは、旧友として誇らしい限り。
これからも頑張って欲しいです。

【店舗情報】
📍 食堂うなり(小伝馬町)
📞 050-5590-1160
🏠 東京都中央区日本橋大伝馬町9-4

トラログ:3.89

文書作成者

佐藤 嘉寅

弁護士法人みなとパートナーズ代表

プロフィール

平成16年10月 弁護士登録
平成25年1月 弁護士法人みなとパートナーズを開設
得意分野:企業間のトラブル、債権回収全般、離婚、相続、交通事故、刑事弁護、サクラサイト被害などの消費者問題にも精通

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