【詐害行為取消】受益者が債務者に支払ったマンション購入代金3000万円は取り戻せるのか?不動産売買における受益者の危険な立場

鈴木豪一郎さん

わが社がBから購入したマンションがあるんだけど、Bの債権者Aから、わが社とBの売買契約が、詐害行為にあたるとして、裁判を起こされてしまったよ。確かに、普通に仲介したら、エンドユーザーに5000万円で売却できるマンションかもしれないけれど、すぐに買い取ってほしいと頼み込まれて3000万円で、やむなく買い取ってあげたのに困ったよ。詐害行為取消が認められることはないと思うんけど、万一、認められた場合、わが社がBに支払った3000万円はどうなるのか教えてもらえるかな。

万一、詐害行為取消が認められると、豪さんの会社が、Bに対してマンションまたはその価額を償還する義務を負います。そのかわり、マンション売買代金の3000万円をBに返せと言えます。問題は、Bに対する3000万円の返還請求権と、Bから豪さんに対する真正な登記名義を回復する登記請求権が同時履行関係にたつかどうかですが、これについてはまだ実務的な判断がなされていません。最悪の場合、マンションの名義を戻したけど、3000万円をBから回収できないということも考えられます。対策としては、Bに戻ったマンションの仮差押え手続きをして強制執行をするんでしょうね。

認容判決の効力が及ぶ者の範囲

詐害行為取消請求をする場合の被告は、受益者あるいは転得者になり、債務者は被告となりません。
しかし、425条で、詐害行為請求を認容する確定判決は、債務者及びその全ての債権者に対してもその効力を有するとされ、債務者に、敗訴判決の効力が及ぶことになります。

この点、債務者の手続き保障のため、債権者は、詐害行為取消の裁判をした場合は、債務者に対し訴訟告知をしなければならないとされたことは、前記のとおりです(424条の7)

旧民法下では、425条のような規定はなく、詐害行為取消の効果は、債務者に及ばない、つまり相対的な効果を有するにすぎないとされていました。
これが、425条で、債務者にも効力が及ぶとされたことから、受益者あるいは転得者が敗訴した場合には、債務者と受益者等の間でも、詐害行為に基づく法律行為がなかったこととになり、原状回復義務が生じます。
つまり、取消債権者と受益者等、また、債務者と受益者等の法律関係を整理する必要が生じるのです。

(認容判決の効力が及ぶ者の範囲)
第四百二十五条 詐害行為取消請求を認容する確定判決は、債務者及びその全ての債権者に対してもその効力を有する。

債務者の受けた反対給付に関する受益者の権利

前記のとおり、詐害行為取消が認められると、債務者と受益者の間でも、原状回復の関係が生じます。
そして、425条の2で、債務の消滅に関する行為を除く、詐害行為取消が認められた場合、受益者は、債務者に対し、その財産を取得するためにした反対給付の返還を請求することができるとされ、債務者が反対給付の返還をすることが困難であった場合は、受益者は、価額の償還を請求することができるとされました。

債務者と受益者間の債務の消滅に関する行為を除く詐害行為取消が認められる 
  ⇩(原状回復義務発生)
①債務者は受益者に給付した財産の返還を請求できる
②受益者は債務者に対し
ア 当該財産を取得するためにした反対給付の返還を請求できる
イ 債務者による現物返還が困難となときは、価額の返還を請求できる

(債務者の受けた反対給付に関する受益者の権利)
第四百二十五条の二 債務者がした財産の処分に関する行為(債務の消滅に関する行為を除く。)が取り消されたときは、受益者は、債務者に対し、その財産を取得するためにした反対給付の返還を請求することができる。債務者がその反対給付の返還をすることが困難であるときは、受益者は、その価額の償還を請求することができる。

受益者の債権の回復

債務者による債務消滅行為が取り消された場合、受益者が債務者から受けた給付を返還し、又はその価額を償還したときに、受益者の債務者に対する債権は、原状に復するものとされました。
但し、受益者が給付を返還後に、受益者の債権が復活することから、受益者の債権と債務者の返還請求権との相殺はできないことが明らかになりました。

(受益者の債権の回復)
第四百二十五条の三 債務者がした債務の消滅に関する行為が取り消された場合(第四百二十四条の四の規定により取り消された場合を除く。)において、受益者が債務者から受けた給付を返還し、又はその価額を償還したときは、受益者の債務者に対する債権は、これによって原状に復する。
(詐害行為取消請求を受けた転得者の権利)

とら先生ぷちコラム
改正民法では、詐害行為取消の効果が債務者に及ぶことになります。詐害行為取消が認められる場合は、実務上はあまり多くありませんが、売主が現金化のために、不動産を売り急いでおり、市場価格よりかなり廉価で売買しようとしているときは、売主にほかに資産があるのか、誰かから借金を負っているといった事情がないのか確認したほうが良いかもしれません。
というのも、例題のように、万一、詐害行為取消が認められた場合、受益者は、マンションの所有名義を、Bに戻さなければならなくなり、また、支出した3000万円も、Bはすでに費消している可能性が高く、受益者がこの3000万円も回復できないとなれば、踏んだり蹴ったりといった状況に追い込まれるからです。
真正な登記名義の回復請求権と3000万円の返還請求権の同時履行関係が認められれば、事実上、Aが質問者に対し3000万円を支払ったうえで、真正な登記名義を回復し、これを換価して債権の回収を図るということも考えられます。ただ、それだと詐害行為取消請求権を認めた法の趣旨が蔑ろにされてしまいます。そのため、同時履行関係を認めるとの判例解釈がなされるかは微妙な気がします。
今後の裁判例の蓄積を待ちたいと思います。
 
 

今回の質問者はこちらの方

不動産クリニック 株式会社常盤不動産代表の鈴木豪一郎さん
はじめてお会いする人は、そのたくましい体躯と、くまのぷ―さんのような穏やかな笑顔とのギャップにとまどうでしょう。
自他ともに認める愛妻家。お子さんたちと相撲に明け暮れる様は、まさに理想の夫ですね。
六女一男を育てる大田区のゴッドファーザーと言われています。
仕事面では、その名のとおり豪腕な面が強いかと思えば、顧客に対する態度は、繊細の一言。
不動産クリニック主席不動産ドクターの名は伊達ではありません。きっと相談者の不安を解消してくれますよ。
※ 質問内容は架空のものです。

鈴木 豪一郎

資産のチーム医療 不動産クリニック不動産ドクター

不動産クリニック ㈱常盤不動産 代表取締役
㈱常盤ホールディングス代表取締役
一般社団法人海外不動産戦略会議代表理事
一般社団法人おおた助っ人代表理事

不動産クリニック 主席不動産ドクター

1971年 東京と神奈川の境目 大田区生まれ
代々続く柔道一家のため、4歳から柔道を始めはや40年以上。
最近はこどものわんぱく相撲出場をきっかけにこどもと一緒に相撲も習い始めました。

不動産業界に身を投じたのは平成9年。
累計1,000件以上の売買・コンサルティング取扱実績。
不動産にまつわる様々な問題解決に真正面から取り組みます。
『×フドウサンヤ』ではなく『○不動産クリニック』であることが信念。

不動産クリニック 主席不動産ドクター
宅地建物取引士 住宅ローンアドバイザー
賃貸不動産経営管理士 住宅建築プロデューサー

H28年アームレスリング90Kg以下級神奈川県大会3位。

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文書作成者

佐藤 嘉寅

弁護士法人みなとパートナーズ代表

プロフィール

平成16年10月 弁護士登録
平成25年1月 弁護士法人みなとパートナーズを開設
得意分野:企業間のトラブル、債権回収全般、離婚、相続、交通事故、刑事弁護、サクラサイト被害などの消費者問題にも精通

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