【保証人に対する情報提供義務】個人の債権者も保証人の求めに応じて主債務の履行状況について情報を提供する義務が定められました!

同居の家族でもない、単なる知人に頼まれて、債権者と保証契約をした場合、保証人が、主たる債務者である知人が、きちんと借金を返済する等、債務を履行しているかを知るのは難しいです。その知人が嘘をつくかもしれませんしね。
そのため、いったん保証人になってしまうと、忘れたころに、債権者から、一括で請求を受けたり、請求を受けた時点で、過大な遅延損害金が発生してしまっていたということがありました。
旧民法では、個人間の借金の場合、消滅時効期間は、10年とされていたため、遅延損害金利率によっては、それこそ元金の2倍以上の請求を受けることも考えられます。
そのため、改正民法では、保証人の権利保護のため、
①主たる債務の履行状況に関する情報の提供義務
②主たる債務者が期限の利益を喪失した場合における情報の提供義務
③保証契約締結時の主債務者の情報提供義務

を定めました。

主債務の履行状況に関する債権者の情報提供義務

保証人が主たる債務者に頼まれて、債権者と保証契約をした場合、保証人から債権者に、債務者の情報提供を求められた場合、債権者は、保証人に対し、遅滞なく、主債務の元本及び主債務に関する利息、損害賠償、その他、主たる債務に関する全ての債務について、不履行の有無、債務の残額、弁済期が到来しているものの額を知らせなければなりません(民法458条の2)。
情報提供を求める保証人も、これに応じる債権者も、個人法人を問いません

法人の債権者であれば、以前から行われていた場合もあり、さほどの違和感はありませんが、個人の債権者は、安易にこれに応じようとしない者もあらわれるかもしれません。

この情報提供義務違反についての特別の定めは、改正民法上ありませんが、通常の債務不履行として、解除や損害賠償の問題になることが考えられます。

むしろ、保証人としては、情報提供を求めて、債権者に拒絶された結果、契約解除できた方がよいのかもしれませんね。そういった意味で、保証人の権利が保護されています。

なお、情報提供を求めることができるのは、主たる債務者に頼まれて、保証人になった人です。
頼まれてもいないのに保証人になる人は、あまり多くないかもしれませんが、契約上は、債権者と保証人との二人で行うことが可能なため、委託を受けない保証人が、民法上想定されています。この委託を受けない保証人に情報提供を求められた場合に、安易に情報提供に応じると、債務者との間でトラブルになる可能性が高いので注意しましょう。

(主たる債務の履行状況に関する情報の提供義務)
第四百五十八条の二 保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、保証人の請求があったときは、債権者は、保証人に対し、遅滞なく、主たる債務の元本及び主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのものについての不履行の有無並びにこれらの残額及びそのうち弁済期が到来しているものの額に関する情報を提供しなければならない。

主債務者が期限の利益を喪失した場合の情報提供義務

主たる債務者が期限の利益を喪失した場合、債権者は、保証人に対し、期限の利益の喪失を知った時から2か月以内に、その旨を通知しなければなりません(民法458条の3第1項)。
期限の利益というのは、例えば、毎月月末の分割返済の合意であり、期限の利益の喪失とは、分割返済ではなく、一括返済をしなければならなくなった場合をいいます。

そして、債権者が、この通知を怠った場合、通知を怠っていた間の遅延損害金(期限の利益を喪失しなかったとしても生ずべきものを除く)を請求することができないとされています。
ただし、保証人は、個人である場合に限られ、法人は含まれません。

この主債務者が期限の利益を喪失した場合の情報提供義務に違反した債権者は、保証人に対し遅延損害金請求ができないというサンクションがありますが(同条第2項)、その限度に止まり、保証人に対し、再度の期限の利益を付与するわけではないので、効果は限定的かもしれませんが、予想外の過大な遅延損害金の請求を避けるという意味で、個人の保証人を保護しています。

(主たる債務者が期限の利益を喪失した場合における情報の提供義務)
第四百五十八条の三 主たる債務者が期限の利益を有する場合において、その利益を喪失したときは、債権者は、保証人に対し、その利益の喪失を知った時から二箇月以内に、その旨を通知しなければならない。
2 前項の期間内に同項の通知をしなかったときは、債権者は、保証人に対し、主たる債務者が期限の利益を喪失した時から同項の通知を現にするまでに生じた遅延損害金(期限の利益を喪失しなかったとしても生ずべきものを除く。)に係る保証債務の履行を請求することができない。
3 前二項の規定は、保証人が法人である場合には、適用しない。

保証契約締結時の主債務者の情報提供義務

主たる債務者が、事業のために負担する債務について、保証又は根保証を頼む場合には、個人の保証人に対し、①財産及び収支の状況
②主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況
③主たる債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その旨及びその内容

を、説明しなければなりません(民法465条の10第1項)。

そして、主たる債務者が、これらの情報を提供せず、又は、嘘の情報を提供し、頼まれた個人が誤って、保証契約をした場合は、主たる債務者が情報提供をしなかったこと、または、嘘の情報を提供していたことを、債権者が、知り又は知ることができたときは、保証人は、保証契約を取り消すことができます(同条2項)。

これも保証人が個人の場合で、主債務が事業のために負担する債務に限られますが、債務者の情報提供義務違反行為について、保証人に取消し権を認めたものは、大きな前進であると思います(同条1項、3項)。
具体的には、金融機関からの会社への事業資金の貸し付けについて、代表者以外の個人が保証する場合が想定されますが、金融機関としては、代表者から保証人に対して、きちんと情報提供をしているか確認する必要に迫られるでしょう。実際に財務状況の悪い会社への貸し付けの際には、特に、債権者として保証人に対し慎重な確認が必要となるでしょう。

(契約締結時の情報の提供義務)
第四百六十五条の十 主たる債務者は、事業のために負担する債務を主たる債務とする保証又は主たる債務の範囲に事業のために負担する債務が含まれる根保証の委託をするときは、委託を受ける者に対し、次に掲げる事項に関する情報を提供しなければならない。
一 財産及び収支の状況
二 主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額及び履行状況
三 主たる債務の担保として他に提供し、又は提供しようとするものがあるときは、その旨及びその内容
2 主たる債務者が前項各号に掲げる事項に関して情報を提供せず、又は事実と異なる情報を提供したために委託を受けた者がその事項について誤認をし、それによって保証契約の申込み又はその承諾の意思表示をした場合において、主たる債務者がその事項に関して情報を提供せず又は事実と異なる情報を提供したことを債権者が知り又は知ることができたときは、保証人は、保証契約を取り消すことができる。
3 前二項の規定は、保証をする者が法人である場合には、適用しない。

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