【借用物受取り前の貸主による使用貸借の解除】ニンテンドースイッチを無償使用する約束を書面でした場合の契約の拘束力は?

民法の改正で、使用貸借契約についても、今までとは、契約の性質が変わったと聞きましたが、具体的に何が変わったのでしょうか?
普段の生活で気を付けないといけないことはありますか。

使用貸借契約は、旧民法では要物契約、つまり、契約が有効に成立するためには、当事者間の意思の合致だけでなく、目的物の引渡しが必要となっていました。しかし、改正民法では、当事者間の意思の合致、すなわち、口約束だけで、使用貸借契約が成立することになりました。
つまり、無償での契約の拘束力が強まったということです。安易な口約束はしない方が良いでしょう。
もっとも、書面によらない使用貸借契約で、目的物の引渡しの前であれば、貸主からの契約の解除が認められています。
例えば、あなたがゲーム機のニンテンドースイッチを貸してと友人に頼まれて、これを承諾して10日間貸すと約束したとします。その場で、友人から約束したことをノートに書いてくれと頼まれて、それをノートに書いた場合、あなたがその約束を守らなかったら、契約の解除もできず、民法593条に基づいて引渡しを求められるということです。
実際には、そこまで問題になることはないかもしれませんが、法的に整理すると、あなたには、引き渡しに応じる義務が生じることになります。

使用貸借契約の諾成契約化

当事者間で、無償で、ある物を利用させていることがありますが、これは、法的には、使用貸借契約という契約になります。
実務上、親族に家の一部屋を貸すというように、経済的な利益が大きく発生する場合だけでなく、例えば、学生時代、教室内で消しゴムがないから少し貸して欲しい、授業が終わったら返すと言って、消しゴムを貸してもらった、そういった些細なことも、法的に整理すると使用貸借契約が成立したということになります。

旧民法では、使用貸借契約は、要物契約とされていました。要物契約とは、当事者の申し込みと承諾という当事者間の意思表示の合致のほかに、目的物の引渡しが契約を有効に成立させるための要件となっている契約類型のことを言います。

これに対し、諾成契約というのは、当事者の申し込みと承諾という当事者間の意思表示の合致のみで、契約が有効に成立します。

すなわち、旧民法のもとでは、口約束だけでは、使用貸借契約は成立しなかったものが、改正民法では、口約束だけで、使用貸借契約が成立することになります。
無償の契約ではありますが、使用貸借契約も、契約の拘束力が増したことは意識しておくべきでしょう。

(使用貸借)
第五百九十三条 使用貸借は、当事者の一方がある物を引き渡すことを約し、相手方がその受け取った物について無償で使用及び収益をして契約が終了したときに返還をすることを約することによって、その効力を生ずる。

期間満了等による使用貸借契約の終了

使用貸借契約がいつ終了するかは、旧民法では、借主の死亡した場合を定めるのみで、はっきりとした終了事由がありませんでした。
ただ、使用貸借の期間を定めたときの目的物の返還義務など、契約の終了をうかがわせる規定になっていたため、これを終了事由として整理しました。また、使用貸借契約の解除の規定としても整理しています。

使用貸借契約の終了事由

①当事者が使用貸借の期間を定めたとき 
 ➡ 期間満了
②当事者が使用貸借の期間を定めなかった場合において、使用及び収益の目的を定めたとき
 ➡ 借主がその目的に従って使用及び収益を終えたとき
③借主の死亡

(期間満了等による使用貸借の終了)
第五百九十七条 当事者が使用貸借の期間を定めたときは、使用貸借は、その期間が満了することによって終了する。
2 当事者が使用貸借の期間を定めなかった場合において、使用及び収益の目的を定めたときは、使用貸借は、借主がその目的に従い使用及び収益を終えることによって終了する。
3 使用貸借は、借主の死亡によって終了する。

借用物受取り前の貸主による使用貸借の解除

使用貸借契約が、諾成契約とされ、契約の拘束力が強まりましたが、無償の契約に、そこまで強い拘束力を認めることも問題です。
そこで、改正法は、借主が借用物を受け取るまでは、契約の解除をすることができると定めて、契約の拘束力を緩和しました。
しかし、これも、書面を作成した場合には、契約の解除ができないとしています。
書面を作成した場合は、単なる口約束とは異なり、契約の拘束力を高めても良いと考えたからです。

(借用物受取り前の貸主による使用貸借の解除)
第五百九十三条の二 貸主は、借主が借用物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。ただし、書面による使用貸借については、この限りでない。

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