【使用貸借契約の解除】大学を卒業後就職が決まるまでの約束で空家を貸していた場合の契約解除

父が、私の従妹に、大学を卒業して、就職が決まるまでの約束で、所有していた空家を無償で貸しているのですが、従妹は、就職して3年がたつのに、一向に出ていこうとしません。父が話をしても、聞く耳をもとうとしません。従妹に出て行ってもらうことはできませんか?

空家を無償で貸しているということだから、お父さんとあなたの従妹との間に、使用貸借契約が締結されていることになります。
使用貸借契約は、旧民法では終了事由が定められていましたが、解除権は規定されていませんでした。改正民法では、旧民法の終了事由を、解除権の形で整理した規定をおいています。
お父さんは、あなたの従妹に対して、大学を卒業後就職が決まるまでの約束で空家を使用させていたわけですから、大学を卒業し就職が決まっている以上、従妹は「使用及び収益の目的」を達成しています。
そのため、お父さんは、使用貸借契約の解除を主張できます。

使用貸借契約の解除

使用貸借契約の終了事由について、改正民法は、597条で整理しましたが、これに加えて、貸主に解除権を与えて、当事者の意思表示によって契約解除できる場合を明確にしました。

契約解除できる場合をまとめると次のとおりとなります。

貸主の解除権

 ①借主が借用物を受け取るまで(書面がない場合に限る)
 ②当事者が使用貸借の期間並びに使用及び収益の目的を定めなかったとき
  ➡ 貸主は、いつでも契約の解除をすることができる。
 ③当事者が使用貸借の期間を定めなかった場合に、使用及び収益の目的を定めたとき
  ➡ 借主がその目的に従って使用及び収益をするのに足りる期間を経過したとき
 ④借主の義務違反行為があった場合
  ア 借主の使用及び収益の義務違反行為
  イ 貸主の承諾のない第三者の使用または収益

借主の解除権

 借主は、いつでも契約の解除可能

(借用物受取り前の貸主による使用貸借の解除)
第五百九十三条の二 貸主は、借主が借用物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。ただし、書面による使用貸借については、この限りでない。
 
(借主による使用及び収益)
第五百九十四条 借主は、契約又はその目的物の性質によって定まった用法に従い、その物の使用及び収益をしなければならない。
2 借主は、貸主の承諾を得なければ、第三者に借用物の使用又は収益をさせることができない。
3 借主が前二項の規定に違反して使用又は収益をしたときは、貸主は、契約の解除をすることができる。
 
(使用貸借の解除)
第五百九十八条 貸主は、前条第二項に規定する場合において、同項の目的に従い借主が使用及び収益をするのに足りる期間を経過したときは、契約の解除をすることができる。
2 当事者が使用貸借の期間並びに使用及び収益の目的を定めなかったときは、貸主は、いつでも契約の解除をすることができる。
3 借主は、いつでも契約の解除をすることができる。
とら先生ぷちコラム
相談者のような事例の場合、相談者のお父様から見て、家に住んでいるのでは、姪っ子にあたりますから、強く出ていくように言うこともできず、ずるずると住み続けられてしまうということがあります。
お父さんが存命中であれば、相談者が強く働きかけて、お父さんから、従妹に対し、契約解除を主張することもできるでしょう。
しかし、お父さんが、契約解除の行動を起こさないまま、亡くなってしまった場合には大きな問題となり、このような相談は、相続の時に、よく生じます。
借主の死亡は、使用貸借の終了事由となっていますが、貸主の死亡は、終了事由ではありません。
無償の契約なのに、ずいぶんと負担が重いですよね。
相続により、貸主たる地位が移転した相談者は、当然、使用貸借の解除を主張することになるでしょう。
しかし、従妹が、「お父さんからは、私が結婚して、家を出ていくまでの間は、自由に使ってよいと言われていた。まだ、私は、独身だから出ていかなくて良いはずだ。」と言い出したら、どうでしょうか。
本当に、そういった約束をしたのであれば、契約解除できないことも考えられます。
言った言わないの争いが続くことになるでしょう。
相続後、こういった法的紛争にならないように、使用貸借契約をするにしても、契約期間、使用収益の目的を、きちんと記載した契約書を作成すべきでしょう。そうしないと、現在の貸主であるあなたではなくて、相続人が苦労することになります。
 

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