【改正民法】賃貸借の存続期間と賃貸人たる地位の移転
今回の改正で、賃貸人たる地位の移転について、条文上明記されたと聞きましたが、注意すべき点はありますか?
賃貸人たる地位の移転は、旧法でも、判例法理として認められていたから、これを整理したものだけど、今回の改正では、賃貸人たる地位の留保が認められたんだ。元々の賃借人の承諾がなくても、賃貸人たる地位を譲渡人にとどめておきたいとの実務上の要請にしたがったものだけど、目新しい規定だから、注意すべきだね。
賃貸借契約の存続期間
旧法では、賃貸借契約の存続期間の上限を20年と定めていましたが、これを50年に延長しました。
改正法604条は、「契約でこれより長い期間を定めたときであっても」としていることから、当事者の合意で変更できない、いわゆる強行規定です。
但し、本条は、借地借家法29条2項で、建物の賃貸借については適用されないことが明示されています。
また、同法3条で、建物所有を目的とする借地権の存続期間は、30年、また、上限なしとされていますので、本条の適用はありません。
太陽光発電設備の設置のための借地のように、借地借家法の適用のない土地の賃貸借契約については、実務上、影響があるでしょう。
不動産の賃貸人たる地位の移転
「売買は、賃貸借を破る」との言葉がありますが、賃貸している不動産を譲渡した場合、不動産の買主と、賃借人の優先関係は、対抗要件の先後関係できまるというのが、判例法理でした。
これを明文規定にしたのが、605条の2第1項です。
賃貸借契約の借主が対抗要件を具備(例:賃借権の登記)
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譲渡人(売主)と譲受人(買主)間の売買契約
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賃貸人たる地位は、譲受人(買主)に移転
不動産の賃貸人たる地位の留保
605条の2第2項は、同条第1項の例外です。
①不動産の譲渡人(売主)及び譲受人(買主)が
②賃貸人たる地位を譲渡人に留保すること、及び、③その不動産を譲受人が譲渡人に賃貸することを合意したとき
➡ 賃貸人たる地位は、譲受人に移転しない
(合意の効果)
譲受人(買主)が貸主、譲渡人(売主)が借主兼転貸人、元々の賃借人が転借人の地位を得る。
賃借人の同意なく、転借人の地位に転化させることから、その法的地位を安定させる必要がある。
譲渡人と譲受人又はその承継人との間の賃貸借が終了したとき
➡ 賃貸人たる地位が、譲受人又はその承継人に移転
(効果)譲受人又はその承継人と転借人が、直接の賃貸借契約関係となり、地位が安定する。
賃貸人たる地位の移転を賃借人に対抗するための要件
賃貸人たる地位の移転は、譲受人(買主)が不動産について、所有権移転登記を受けなければ、賃借人(借主)に対抗できない(605条の2第3項)
(対抗の意味)
賃貸人たる地位は移転しているが、譲受人(買主)が不動産について、所有権移転登記を受けないと、賃料の請求をできない。
賃貸人たる地位の移転に伴う費用償還債務と敷金返還債務の承継
605条の2第4項は、賃貸人たる地位が移転した場合、当然に費用償還債務と敷金返還債務が承継されることを定めています。
賃貸人たる地位が、譲受人又はその承継人に移転
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費用償還債務と敷金返還債務の承継
合意による不動産の賃貸人たる地位の移転
605条の3は、不動産の譲渡人が賃貸人であるときは、賃借人の承諾なくとも、譲渡人と譲受人の合意のみで、賃貸人たる地位を移転させることができることを定めています。
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