【個人根保証契約の保証人の責任】極度額の定めのない個人根保証契約は無効となりました!
大学時代の親友が言っていました。
「どんなに親しくなっても、保証人にはならんけぇ(広島弁)」と。
親友がそのように言うほど、安易に引き受けて、主債務者が夜逃げでもしたら、保証人は莫大な借金を背負ってしまうという怖い制度です。
改正民法では、そんな保証規定が、保証人が個人の場合に限り、その責任制限の形で改正されています。
極度額の定めのない個人根保証契約の無効
改正民法で、大きく変わった保証責任は、極度額の定めのない個人根保証契約が無効とされたことです。
根保証契約は、継続的な取引から生じる不特定の債務を保証するものをいいます。
一回限りの借金の保証人になることを頼まれて応じたのであれば良いですが、実は、借主は、繰り返し、貸主からお金を借りることを考えていて、貸主と保証人との契約は、その継続的な金銭消費貸借契約を保証するものだったというのが、根保証です。
根保証は、借金をするたびに、わざわざ保証契約をしなくても良いという貸主、借主側のメリットはありますが、保証人としては、いつの間にか莫大な借金を背負うことになる可能性のあるものでした。
旧法では、貸金の個人の根保証契約については、保証する限度額である極度額を限度として責任を負うことを定め、極度額の定めがない保証契約は無効であるとしていました。
加えて、極度額の定めは、書面によるとされています。
但し、保証契約が問題となるのは、貸金契約の場合だけではなく、継続的売買取引の売買代金の保証、あるいは、賃貸借契約の賃料、契約解除時の損害賠償、原状回復費用といった債務を保証する場合もあります。そして、これらの債務は、保証人の予測を超えて、多額になる可能性があるのは、貸金契約の保証と変わりません。
そこで、改正民法では、貸金等根保証契約に限らず、個人の極度額の定めのない根保証契約全般について、無効としたのです。
(個人根保証契約の保証人の責任等)
第四百六十五条の二 一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約(以下「根保証契約」という。)であって保証人が法人でないもの(以下「個人根保証契約」という。)の保証人は、主たる債務の元本、主たる債務に関する利息、違約金、損害賠償その他その債務に従たる全てのもの及びその保証債務について約定された違約金又は損害賠償の額について、その全部に係る極度額を限度として、その履行をする責任を負う。
2 個人根保証契約は、前項に規定する極度額を定めなければ、その効力を生じない。
3 第四百四十六条第二項及び第三項の規定は、個人根保証契約における第一項に規定する極度額の定めについて準用する。
元本確定期日の定めは個人貸金等根保証契約のみ
元本確定期日の定めについては、旧民法のとおり、貸金等根保証契約についてのみ適用され、他の根保証契約には、拡大されませんでした。
元本確定期日とは、その名のとおり、貸金の元となる金額を確定するものです。
これについては、5年を超えて定めることはできず、5年を超えて定めた場合、また、定めがない場合は、元本確定期日は、個人貸金等根保証契約の締結の日から3年を経過する日とされています。
そのため、賃貸借契約の根保証については、極度額の定めがあるものの、賃貸借契約の終了まで続くことになりました。
(個人貸金等根保証契約の元本確定期日)
第四百六十五条の三 個人根保証契約であってその主たる債務の範囲に金銭の貸渡し又は手形の割引を受けることによって負担する債務(以下「貸金等債務」という。)が含まれるもの(以下「個人貸金等根保証契約」という。)において主たる債務の元本の確定すべき期日(以下「元本確定期日」という。)の定めがある場合において、その元本確定期日がその個人貸金等根保証契約の締結の日から五年を経過する日より後の日と定められているときは、その元本確定期日の定めは、その効力を生じない。
2 個人貸金等根保証契約において元本確定期日の定めがない場合(前項の規定により元本確定期日の定めがその効力を生じない場合を含む。)には、その元本確定期日は、その個人貸金等根保証契約の締結の日から三年を経過する日とする。
3 個人貸金等根保証契約における元本確定期日の変更をする場合において、変更後の元本確定期日がその変更をした日から五年を経過する日より後の日となるときは、その元本確定期日の変更は、その効力を生じない。ただし、元本確定期日の前二箇月以内に元本確定期日の変更をする場合において、変更後の元本確定期日が変更前の元本確定期日から五年以内の日となるときは、この限りでない。
4 第四百四十六条第二項及び第三項の規定は、個人貸金等根保証契約における元本確定期日の定め及びその変更(その個人貸金等根保証契約の締結の日から三年以内の日を元本確定期日とする旨の定め及び元本確定期日より前の日を変更後の元本確定期日とする変更を除く。)について準用する。
元本確定事由の違い
また、個人根保証契約の元本の確定事由についても、貸金等根保証契約についてのみ、債権者が主たる債務者の財産について強制執行または担保権の実行をしたとき、また、主たる債務者が破産手続開始の決定を受けた時のように、主たる債務者の事情が考慮されています。
(個人根保証契約の元本の確定事由)
第四百六十五条の四 次に掲げる場合には、個人根保証契約における主たる債務の元本は、確定する。ただし、第一号に掲げる場合にあっては、強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。
一 債権者が、保証人の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。
二 保証人が破産手続開始の決定を受けたとき。
三 主たる債務者又は保証人が死亡したとき。
2 前項に規定する場合のほか、個人貸金等根保証契約における主たる債務の元本は、次に掲げる場合にも確定する。ただし、第一号に掲げる場合にあっては、強制執行又は担保権の実行の手続の開始があったときに限る。
一 債権者が、主たる債務者の財産について、金銭の支払を目的とする債権についての強制執行又は担保権の実行を申し立てたとき。
二 主たる債務者が破産手続開始の決定を受けたとき。
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