【請負契約】旧民法の担保責任規定の削除と売買契約の契約内容不適合制度の準用
うちの会社で、A社から、システム開発の事業を受注しました。現時点では、特に問題は発生しとらんのだけど、民法が改正されたと聞いたので、どういったことが問題となるのか教えてくれへん?
田端さんの会社で行っているシステム開発事業は、請負契約にあたると思いますが、旧民法では、請負契約の担保責任規定が、売買契約の担保責任規定とは別に規定されていました。改正民法では、売買の担保責任に関する規定が包括準用されることとなり、それが適用されない例外規定が規定されています。
請負契約とは、請負人が仕事を完成させることを約束し、その結果に対して報酬が支払われる形式の契約のことを言います。
仕事の完成または仕事の目的物である完成品の引渡しと、その代価として報酬支払いをするという点で、売買契約に類似する面があります。
この点、旧民法では、売買契約の担保責任の規定が、法定責任説と債務不履行責任の特則である契約責任説との争いがありましたが、改正民法では、契約責任説が採用されており、請負契約との類似性がさらに強まりました。
そして、売買契約において、担保責任の制度は、契約責任不適合制度という形で整理されました。
改正民法では、請負の担保責任について、売買の規定が包括準用されることになりました。
つまり、種類又は品質に関して契約内容に適合する仕事の目的物を引き渡す責任(契約不適合責任)を負うことになります。
また、仕事の目的物に瑕疵があった場合の注文者の修補請求権・損害賠償請求権(旧民法634条)、契約解除(旧民法635条)、期間延長(旧民法639条)、担保責任を負わない特約(旧民法640条)が削除されています。
請負人の契約内容不適合責任のまとめ
請負契約における注文者の権利は、次のとおりです。
この点は、売買における契約内容不適合制度とパラレルに考えれば良いため、すでに説明した下記の記事を参考にしてください。
①修補請求権(562条1項)
②報酬金減額請求権(563条1項、同条2項)
③契約の解除(564条、541条、542条)
④債務不履行による損害賠償(564条、415条)
①修補請求権
旧民法の634条1項に代替するのが、改正法562条になります。
売買の規定ですが、これを請負の形に読み替えると、請負の目的物に「種類、品質に関して契約の内容に適合しないものであるとき」、注文者は、請負人に対し、目的物の修補請求することができます。
但し、請負人も、「注文者に不相当な負担を課するものでないとき」との条件のもと、注文者の求める内容とは異なる方法による履行の追完をすることができます。
同条2項は、契約内容不適合が、債権者である注文者の責任である場合には、注文者は、履行の追完を請求できないものとしています。
②報酬金減額請求権
旧民法では、報酬金減額請求権の規定はありませんでしたが、改正民法では、563条1項により可能です。
これも、請負の形に読み替えると、請負の目的物が、契約内容に適合しない場合に、注文者が相当の期間を定めて催告し、その期間内に修補されないときは、注文者は、不適合の程度に応じて報酬金の減額を請求できます。
そして、同条2項は、無催告で、注文者が代金の減額を請求できる場合があることを規定し、同条3項では、注文者の責めに帰すべき事由による契約内容不適合の場合には、報酬金減額の請求を行使できません。
(買主の代金減額請求権)
第五百六十三条 前条第一項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、買主は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。
一 履行の追完が不能であるとき。
二 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。
四 前三号に掲げる場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。
3 第一項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、前二項の規定による代金の減額の請求をすることができない。
③注文者の解除
④債務不履行に基づく損害賠償請求権
旧民法635条、638条、634条2項で規定されていた解除権、損害賠償請求権を代替するのが、564条です。
契約内容不適合の場合に、一般の解除、債務不履行に基づく損害賠償請求を求めることができることを規定します。
この点、旧民法634条2項の損害賠償請求権は、請負人の帰責事由は不要としていましたが、契約内容不適合制度のもとでは、415条に基づく債務不履行責任に基づく損害賠償請求のため、注文者の損害賠償請求が認められるためには、請負人(債務者)の帰責性が必要となります。
(買主の損害賠償請求及び解除権の行使)
第五百六十四条 前二条の規定は、第四百十五条の規定による損害賠償の請求並びに第五百四十一条及び第五百四十二条の規定による解除権の行使を妨げない。
今回の質問者はこちらの方
IT系企業の代表の田端さん
人当たりがよく、面倒見も良い、こういった人が社長だと、楽しく仕事ができるんだろうなと思わせてくれる人です。
株式会社クレアコンシェルの奥村光英さんの「新規ビジネス立ち上げのトリセツ」にも実名で登場しているので、どんな感じで商談をしているのかが分かります。
田端さん、できる男ですね!
田端 一雅
株式会社必然 代表取締役社長
ゲームから農業IOTまで手掛けてる会社
日常的に感じている「なぜ」について追求と改善をして、より社会の身近なものを便利に変えていくのが必然です。
①小児向け歯科診察支援ツール「スマイルタッチ デンタル」
②漫画・イラスト事業
③プロフェッショナル人材、シェアリングサービス事業
必然のスタッフはWEBサービス及びゲーム系のシステム開発、インフラ構築を得意としています。
一部上場企業の開発プロジェクトではプロジェクトマネージャを担当しているスタッフも在籍しています。
④ソリューション開発事業
必然の開発におきまして、システム開発とWebサイト制作、インフラ環境構築の3つを主軸としております。
⑤歯科医院向けデジタルサイネージ「デンタルアシストTV」
⑥農業IOT
趣味はクワガタ採取です。
文書作成者
佐藤 嘉寅
弁護士法人みなとパートナーズ代表
プロフィール
平成16年10月 弁護士登録
平成25年1月 弁護士法人みなとパートナーズを開設
得意分野:企業間のトラブル、債権回収全般、離婚、相続、交通事故、刑事弁護、サクラサイト被害などの消費者問題にも精通
お気軽にお問い合わせください。03-6206-9382電話受付時間 9:00-18:00
[土日・祝日除く ]
メールでの問合せは全日時対応しています