【請負契約】常連客の持ち込み生地によるオーダースーツが一回のクリーニングで着れなくなった場合の責任はどうなるのか?


田中大輔さん

常連のお客様から、オーダースーツの注文をいただきました。お客様は、海外旅行が趣味で、珍しい生地が手に入ったとのことで、その生地で、スーツを作ってほしいとのことでした。私は、注文通り、その生地でスーツを作成して納品しました。しかし、お客様が、クリーニングに出したところ、一回で生地が縮み、色あせしてしまい、スーツが着れなくなってしまったとのことで、代金の返還を請求してきました。私は、対応する必要がありますか?

オーダースーツの注文は、典型的な請負契約ですが、一度、クリーニングをしただけでスーツが着れなくなってしまった場合は、契約不適合と言えます。但し、質問の場合のように、お客様が、生地を持ち込んで、スーツの作成を依頼しているので、「注文者の供した材料の性質」から契約内容に適合しないため、改正民法636条から、そのお客様は、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができません。但し、田中さんが、その生地が、スーツには適さないものであると知っていて、お客様に告げなかった場合は、契約が解除されて、代金の返還をしなくてはならなくなりますよ。

請負人の担保責任の制限(注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じた不適合)

請負契約の契約内容不適合制度のもとでは、注文者に帰責事由がある場合には、562条2項から、履行の追完請求ができません。
また、請負契約独自のルールとして、注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じた不適合については、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができません。
但し、請負人がその材料又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、これらの請求が可能となります。

(請負人の担保責任の制限)
第六百三十六条 請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したとき(その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時に仕事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないとき)は、注文者は、注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じた不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、請負人がその材料又は指図が不適当であることを知りながら告げなかったときは、この限りでない。

担保責任の期間の制限

旧民法では、請負契約の担保責任について、仕事の目的物が引き渡されたとき(仕事の目的物の引渡しを要しない場合は仕事が終了した時)から、1年以内に行使しない場合は、請求できないとしていました。
しかし、これだと、注文者が、不適合の事実を知らなくても権利の行使ができなくなってしまうという不都合がありました。
そこで、売買の担保責任の期間制限と同様に、請負人が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない仕事の目的物を注文者に引き渡したとき(その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時に仕事の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないとき)は、注文者がその不適合を知った時から一年以内にその旨を請負人に通知しないときは、担保責任の追及ができないとしました。

なお、注文者がすることは、1年以内に契約内容の不適合を通知することで、訴訟提起をする必要はありません。

(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)
第六百三十七条 前条本文に規定する場合において、注文者がその不適合を知った時から一年以内にその旨を請負人に通知しないときは、注文者は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。
2 前項の規定は、仕事の目的物を注文者に引き渡した時(その引渡しを要しない場合にあっては、仕事が終了した時)において、請負人が同項の不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、適用しない。
とら先生ぷちコラム
持ち込みの生地によるオーダースーツの作成もあるようですが、質問例は、架空のものです。質問例は、若干、極端な例ではありますが、注文者の供した材料の性質又は注文者の与えた指図によって生じた不適合については、履行の追完の請求、報酬の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができないとされていますので、請負人である田中さんは法的責任を負いません。但し、その生地がスーツには適さないことを知っていた場合に、そのことを告げなかった場合は、責任を負うことになります。実際、スーツに適する生地か否かは、プロである田中さんが間違えることはないかと思いますが、未知の生地という設定ですのでご了承ください。
しかし、オーダースーツは、一度注文すると既製品に戻ることが難しくなるほど良いものです。しかし、きちんと採寸して、その通りに作ってもらわないといけませんね。私も、ダイエット中に、痩せると見越してウエストきつめに注文したら、結局、ウエストぱんぱんで、なかなかズボンがはけないということがありました。希望的観測のもとオーダースーツを注文してはいけません。箪笥の肥やしになりませんように。
 

今回の質問者はこちらの方

口コミと紹介でしか逢えないオーダースーツ屋さん ReL(リエル)の代表の田中大輔さん
眼鏡がとても似合うイケメンですが、とにかく酒豪。
お酒に自信がある方は、飲み対決を挑んではいかがでしょうか。私は辞退しますが(=゚ω゚)ノ

田中 大輔

口コミと紹介でしか逢えないオーダースーツ屋さん

「ReL(リエル)」代表 

林修先生や把瑠都さんのスーツも含め延べ1,000着以上のスーツを手掛けています!

1982年11月29日生まれ
東京都新宿区生まれの埼玉県育ち。
3人兄弟の長男。
成蹊大学を卒業後、株式会社 髙島屋へ入社。
紳士服部へ配属され、3年間の勤務。
その後、独立し、現在は、口コミと紹介でしか逢えないオーダースーツ屋さん。
ReL(リエル)の代表として日々、お客様へスーツをお届けしています。
この事業を開始して11年。
林修先生や把瑠都さんのスーツも含め、延べ1,000着以上のスーツを手掛けています。
ReL(リエル)の意味は、人とのつながり「Relation」を大切にしたいとの思いから。
オーダースーツを通じて、単なる販売員とお客様という関係ではなく、 一生涯お付き合いしていけるような、より密な信頼関係を作っていきたい。
これからのあなたの素敵な人生。 その中に少しだけ私達のスペースをください。

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文書作成者

佐藤 嘉寅

弁護士法人みなとパートナーズ代表

プロフィール

平成16年10月 弁護士登録
平成25年1月 弁護士法人みなとパートナーズを開設
得意分野:企業間のトラブル、債権回収全般、離婚、相続、交通事故、刑事弁護、サクラサイト被害などの消費者問題にも精通

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