【法定利率の変動】法定利率は年5%から年3%へ 3年ごとに見直しがされます!
法定利率は年3%、3年ごとの見直しあり
法定利率とは、その名のとおり、法律によって定められた利率です。
これに対して、当事者間で合意した利率が、約定利率と言います。
この法定利率は、旧民法では、5%、また、商法では、商取引に基づいて発生した債権の利率を、6%と定めていました。
金銭債務の不履行による損害賠償額も、別段の合意がない限り、法定利率の年5%で計算をされます。
一般の契約では、利率の定めがあるため、あまり意識したことがないかもしれませんが、例えば、交通事故により被害者が加害者に損害賠償請求をする場合、遅延損害金として請求できるのは、法定利率の5%でした。
そのため、事故発生日から、解決するまでの間に時間がかかれば、その分、遅延損害金5%が加算されます。
5%とはいっても、実際に紛争解決するまでに、3年間かかかれば、損害額に、15%の遅延損害金が加算されるこになるわけです。結構、大きい金額ですよね。
そして、現在、超低金利の時代で、法定利率と、実際の利率の状況に乖離が生じていたのも事実です。
他方、実際の利率の状況に応じた住宅ローン金利のような完全な変動制にしてしまうと、収拾がつかなくなってしまいます。
そこで、改正民法では、次のような内容で、3年ごとに法定利率の見直しをし、1%以上の増減があった場合、1%刻みで増減させるとの方法で、緩やかな変動制を取り入れました。
また、商法514条が削除され、商行為債権についても、民法の法定利率と同率とされました。
①法定利率は、年3%
②法定利率は、法務省令で定めるところにより、3年ごとに見直し。
③「基準割合」とは、法務省令で定めるところにより、各期の初日の属する年の6年前の年の1月から前々年の12月までの各月における銀行の短期貸付けの平均利率の合計を60で除して計算した割合(その割合に0.1%未満の端数切捨)として法務大臣が告示するもの
④各期の法定利率は、法定利率に変動があった直近の期の基準割合と、当期の基準割合との差に相当する割合(1%未満の端数は切捨)を直近変動期における法定利率に加算し、又は減算した割合とする。
結局、令和2年4月1日以降、法定利率は、すべて3%とされ、次回の見直しは、令和5年ということになりますので、その際の法定利率が変更にならないか注意する必要がありますね。
適用利率の基準時
法定利率は、年3%となりましたが、適用利率の基準時は、令和2年4月1日です。
但し、附則15条より、令和2年4月1日より前に、利息が生じた場合の法定利率は、従前の例によるとされていますので、年5%となります。
債務不履行に基づく遅延損害金については、期限の定めの有無により、その起算点が相違しますが、遅滞責任が生じた時点が、令和2年4月1日以降であれば、年3%の法定利率になります。
また、前例にあげた交通事故のような不法行為に基づく損害賠償請求権は、不法行為日に遅滞に陥るとされていますので、事故日(不法行為日)が、令和2年4月1日以降であれば年3%、それ以前であれば、年5%となります。
(金銭債務の特則)
第四百十九条 金銭の給付を目的とする債務の不履行については、その損害賠償の額は、債務者が遅滞の責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。ただし、約定利率が法定利率を超えるときは、約定利率による。
附則(債権の目的に関する経過措置)
第十五条 施行日前に利息が生じた場合におけるその利息を生ずべき債権に係る法定利率については、新法第四百四条の規定にかかわらず、なお従前の例による。
まとめ
法定利率の変更は、実務に与える影響は大きいでしょう。
契約上の責任については、契約書上、利率、遅延損害金利率の定めがあるのが、普通ですが、契約書の作成をしていない場合、特に、商行為債権については、6%だったものが、3%になるわけですから、半額になってしまいます。
また、不法行為責任の場合は、遅延損害金について、法定利率が常に問題となります。
3年ごとの見直しも予定されているので、今後は、利率の更なる変動にも注意が必要でしょう。
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