【委任契約】受任者である経営コンサルタントの業務多忙を理由とした中途終了の場合にも報酬支払は必要か?


奥村光英さん

弊社がA社から受注したコンサルティング契約について、A社の承諾のうえ、弊社とともに、経営コンサルタントBにも協力してもらってすすめてきました。しかし、Bは業務多忙を理由に、決められた期日までに経営企画書を作成できず、A社からのクレームもありやめてもらうことになりました。Bから約定報酬の請求がきているのですが、支払いをしないといけないのですか?

Bが業務多忙を理由として決められた期日までに経営企画書を作成できなかったとのことですから、Bの責めに帰すべき理由により委任事務の履行ができなくなったと評価できます。しかし、改正民法では、受任者の責めに帰すべき事由により委任事務の履行ができなかったときも、Bは、奥村さんの会社に履行の割合に応じた報酬請求ができるとされています。Bの債務不履行については、奥村さんの会社との関係で、損害賠償の問題として処理することになります。

復受任者の選任の明文化

委任契約は、当事者の一方が法律行為をすることを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる契約を言います(643条)。
委任者と受任者の信頼関係を基礎としているわけですから、受任者は原則として、自ら事務処理を行わなければなりません。
しかし、依頼者の承諾のもと、復受任者が選任されている場合は、多々あります。
旧民法では、復受任を直接定めた規定がなかったため、改正民法では、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときに、復受任者を選任できることを明文化しました。

(復受任者の選任等)
第六百四十四条の二 受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができない。
2 代理権を付与する委任において、受任者が代理権を有する復受任者を選任したときは、復受任者は、委任者に対して、その権限の範囲内において、受任者と同一の権利を有し、義務を負う。

受任者の報酬

委任契約の場合、受任者の報酬請求は、無報酬が原則で、報酬を請求する場合は、特約をさだめる必要があります(648条1項)。
そして、旧民法648条3項では、受任者の責めに帰することができない事由によって履行の中途で終了したときは、受任者は、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができるとされていました。
しかし、改正民法では、委任の当事者双方に帰責事由がない場合のみならず、受任者に帰責事由がある場合にも、割合的報酬を認めています。
他方、委任者に帰責事由があり、受任者が履行できなかった場合は、536条2項の解釈問題となり、報酬全額が認められるかが問題となります。

受任者は、次に掲げる場合には、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。
一 委任者の責めに帰することができない事由によって委任事務の履行をすることができなくなったとき。
二 委任が履行の中途で終了したとき。

質問例の場合

復受任者であるBの責めに帰すべき理由により委任事務の履行ができなくなっていますので、旧民法では、Bは、奥村さんの会社に履行の割合に応じた報酬請求はできないことになりますが、改正民法のもとでは、Bは、奥村さんの会社に履行の割合に応じた報酬請求ができることになります。
Bの債務不履行については、奥村さんとの関係で、損害賠償の問題として処理すれば足ります。

(受任者の報酬)
第六百四十八条 受任者は、特約がなければ、委任者に対して報酬を請求することができない。
2 受任者は、報酬を受けるべき場合には、委任事務を履行した後でなければ、これを請求することができない。ただし、期間によって報酬を定めたときは、第六百二十四条第二項の規定を準用する。
3 受任者は、次に掲げる場合には、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる。
一 委任者の責めに帰することができない事由によって委任事務の履行をすることができなくなったとき。
二 委任が履行の中途で終了したとき。
(成果等に対する報酬)
第六百四十八条の二 委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合において、その成果が引渡しを要するときは、報酬は、その成果の引渡しと同時に、支払わなければならない。
2 第六百三十四条の規定は、委任事務の履行により得られる成果に対して報酬を支払うことを約した場合について準用する。

とら先生ぷちコラム
受任者の責めに帰すべき事由により委任事務が履行できなくなった時にも、履行の割合に応じた報酬請求ができなくなった場合にも、履行の割合に応じた報酬が請求できるとするのは、一見、不合理にも思われますが、受任者のした行為について、何の対価もないのも不合理です。これは、コンサルティング契約について成果報酬にしていた場合に顕著と言えます。
そこで、改正民法では、受任者に責任がある場合にも、履行の割合に応じた報酬請求ができるとしました。
 

今回の質問者はこちらの方

収益プランナーとして新規事業の立ち上げなどに尽力されている奥村さん
見た目通り、人当たりもよくて、真面目な人です。
新規事業を立ち上げたいと考えている人がいたら、是非相談してみてください。
奥村さんの著書の「新規ビジネス立ち上げのトリセツ」を見ると、奥村さんの仕事ぶりがよく分かります。

奥村 光英

現場密着型 実現にこだわる新規事業コンサルタント

クレアコンシェル株式会社 代表取締役

企画は実現してこそ「価値」がある。

絵に描いた餅は、美術的な価値を求める人には意味があるかもしれませんが、お腹をすかせた人には価値はありません。
ビジネスでもそれは同じで、どんなに美しい事業企画であっても、実現できなければ価値はないと考えます。
クレアコンシェルは、実現することに徹底的にこだわり取り組みます。
人がひとりでできることには、自ずと限界があります。それは法人であっても同じと考えます。
1人より2人、2人より3人が連携すれば、より大きな価値を社会に創出できるはずです。
決して独りよがりになること無く、お客様と共に価値を創造することを基本理念としています。
お困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。

Profile Picture

 

文書作成者

佐藤 嘉寅

弁護士法人みなとパートナーズ代表

プロフィール

平成16年10月 弁護士登録
平成25年1月 弁護士法人みなとパートナーズを開設
得意分野:企業間のトラブル、債権回収全般、離婚、相続、交通事故、刑事弁護、サクラサイト被害などの消費者問題にも精通

Profile Picture

お気軽にお問い合わせください。03-6206-9382電話受付時間 9:00-18:00
[土日・祝日除く ]
メールでの問合せは全日時対応しています

お問い合わせ