【寄託契約】水産会社Aの海産物の保管をしていたB会社がC会社に再寄託し高潮被害に合った場合の法的処理

矢口岳史先生

顧問先の水産会社Aが、倉庫業者のB会社と海産物を寄託する倉庫契約をしていたんですが、B会社の倉庫に保管する場所がなくなって、C会社に再寄託したところ、先日の台風の高潮で、C会社の倉庫に保管していた海産物が売り物にならなくなってしまいました。そのため、A会社は、B会社に損害賠償請求をしているんですが、認められますよね。ちなみに、C会社は、高潮の被害で破産したとのことです。

寄託契約の受寄者であるB会社が再寄託できるのは、寄託者である水産会社Aの承諾を得た場合か、やむを得ない事由がある場合に限定されていますが、B会社の倉庫に保管する場所がなくなっても、A会社の承諾を得ることは可能でしょうから、無断寄託になる可能性が高いです。そのため、B会社への請求は認められるでしょう。なお、再受寄者であるC会社は、A会社に対して保管義務を負うことになるので、損害賠償責任を負う可能性がありましたが、破産したので、C会社への請求は無理ですね。

要物契約から諾成契約へ

寄託契約は、物を預かって保管してもらう契約です。典型的なものは、倉庫契約です。
旧民法では、寄託契約は要物契約とされていました。
要物契約とは、契約を締結する当事者の合意の他に物などの引き渡しなどがあって成立する契約のことを言います。
改正民法では、物の引渡しを不要として、当事者の合意のみで成立する諾成契約であることを明らかにしました。

(寄託)
第六百五十七条 寄託は、当事者の一方がある物を保管することを相手方に委託し、相手方がこれを承諾することによって、その効力を生ずる。

寄託物受取り前の寄託者による寄託の解除等

寄託契約が諾成契約とされたことによって、物の引渡し前に契約の拘束力が発生することから、法律関係を整理する規定がおかれました。

寄託者からの解除

寄託者は、受寄者が、寄託物を受け取るまで、契約の解除をすることができます。但し、受寄者に損害が生じたときは、賠償請求できることをさだめています。

受寄者からの解除

無報酬かつ書面によらない寄託契約の場合、受寄者は、寄託物を受け取るまでの間、契約を解除することができます。
有償、及び、書面による無報酬の寄託契約の場合、受寄者は、寄託物を受け取る時期を経過したにもかかわらず寄託者が寄託物を引き渡さない場合に、相当の期間を定めて引渡しの催告をし、相当期間内に引渡しがないときは契約を解除することができます。

(寄託物受取り前の寄託者による寄託の解除等)
第六百五十七条の二 寄託者は、受寄者が寄託物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。この場合において、受寄者は、その契約の解除によって損害を受けたときは、寄託者に対し、その賠償を請求することができる。
2 無報酬の受寄者は、寄託物を受け取るまで、契約の解除をすることができる。ただし、書面による寄託については、この限りでない。
3 受寄者(無報酬で寄託を受けた場合にあっては、書面による寄託の受寄者に限る。)は、寄託物を受け取るべき時期を経過したにもかかわらず、寄託者が寄託物を引き渡さない場合において、相当の期間を定めてその引渡しの催告をし、その期間内に引渡しがないときは、契約の解除をすることができる。

寄託物の使用及び第三者による保管

旧民法では、受寄者が再寄託できるのは、寄託者の承諾を得た場合に限定されていました。これに加え、改正民法では、やむを得ない事由がある場合には受寄者が再寄託できることが規定されました。
また、再受寄者は、寄託者に対し、その権限の範囲内において、受寄者と同一の権利を有し、義務を負うことが規定されました。

(寄託物の使用及び第三者による保管)
第六百五十八条 受寄者は、寄託者の承諾を得なければ、寄託物を使用することができない。
2 受寄者は、寄託者の承諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、寄託物を第三者に保管させることができない。
3 再受寄者は、寄託者に対して、その権限の範囲内において、受寄者と同一の権利を有し、義務を負う。
とら先生ぷちコラム
寄託契約も、委任契約と同様、人的信頼関係に基づいた契約なので、受寄者は、再寄託できないのが原則ですが、標準倉庫寄託約款では、「やむを得ない事由があるとき」は寄託者の承諾がなくても、再寄託を認めていました。そのため、改正民法では、これと平伏を合わせる形で、やむを得ない事由があるときは、受寄者に再寄託を認めました。
質問例の場合には、寄託者であるA会社の承諾を得ていないので、無断寄託として債務不履行責任を負う可能性が高いですが、今までの取引のなかで、B会社の保管量を超過する海産物について、C会社への再寄託が多く行われており、それをA会社が認識していたような場合は、黙示の承諾が認められる可能性があります。その場合、高潮による被害が、再受寄者の責めに帰すべき事由により生じたか否かが、債務不履行責任に基づく損害賠償請求が認められるか否かの分水嶺となります。
 
 

今回の質問者はこちらの方

柔らかな物腰ながら舌鋒鋭い敏腕税理士の矢口先生
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矢口 岳史

港区で20年

税理士法人タクティクス 代表・税理士

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20歳で税理士試験に合格後、芸能プロダクション勤務という異色の経歴を経て、25歳で独立開業。
2018年に二十周年を迎える。
12年間毎日更新を続けたブログは昨年末に惜しまれつつ終了。

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文書作成者

佐藤 嘉寅

弁護士法人みなとパートナーズ代表

プロフィール

平成16年10月 弁護士登録
平成25年1月 弁護士法人みなとパートナーズを開設
得意分野:企業間のトラブル、債権回収全般、離婚、相続、交通事故、刑事弁護、サクラサイト被害などの消費者問題にも精通

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