【不法行為の消滅時効】除斥期間から消滅時効へ and 人の生命又は身体を害する不法行為の消滅時効は3年から5年へ

不法行為による損害賠償請求権の消滅時効

旧民法724条では、「不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から二十年を経過したときも、同様とする。」と定めており、改正民法も、同様の内容になっていますが、旧民法の20年間は、判例上、除斥期間と考えられており、時効の中断、停止といったものがなく、請求権を行使できないとすることについて、著しく正義公平に反する場合があると考えられてきました。
そこで、改正民法では、除斥期間ではなく、消滅時効の問題であることが、条文上、明らかにされました。

(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
第七百二十四条 不法行為による損害賠償の請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。
一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から三年間行使しないとき。
二 不法行為の時から二十年間行使しないとき。

生命・身体侵害による損害賠償請求権の消滅時効

改正民法では、債権の消滅時効期間は、客観的起算点から10年、主観的起算点から5年とされていますが、人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権については、客観的起算点から20年とされています。これは、生命・身体という重要な法益に対して時効期間の長期化がなされたものです。

また、人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効も、主観的起算点について、原則である3年の時効期間ではなく、5年の時効期間とされています。具体的には、詐欺などの財産的損害に対する不法行為の場合は、損害および加害者を知った時から3年で時効消滅し、交通事故等で怪我をした場合は、5年の時効期間ということになります。
この部分については、旧民法より、単純に、時効期間が長期化したもので、請求する側からすれば有利に改正されています。

不法行為に基づく損害賠償請求と債務不履行に基づく損害賠償請求の競合と消滅時効

契約当事者間のトラブル、例えば、使用者と従業員間で安全配慮義務違反が争われる場合、投資契約上のトラブルなど、不法行為と債務不履行とが競合するということはよくあります。
実際、損害及び加害者を知った時から3年がたっているので、加害者が消滅時効を援用して、不法行為に基づく損害賠償請求が認められなくなる可能性が高い場合でも、債務不履行に基づく損害賠償請求は、10年の消滅時効期間が認められるので、債務不履行を理由に訴訟提起をするといったケースがあります。
改正民法で、基本的に、すべての時効期間は、長期化されましたが、債権の消滅時効で、主観的起算点の考えが導入されたことで、例えば、使用者と従業員間で安全配慮義務違反が争われる場合で、安全配慮義務違反の行為と損害の発生が、従業員に確認できる場合には、今までは、10年の時効期間だったものが、5年の時効期間となることが考えられます。この点については、注意が必要でしょう。

(人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効)
第百六十七条 人の生命又は身体の侵害による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一項第二号の規定の適用については、同号中「十年間」とあるのは、「二十年間」とする。
(人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)
第七百二十四条の二 人の生命又は身体を害する不法行為による損害賠償請求権の消滅時効についての前条第一号の規定の適用については、同号中「三年間」とあるのは、「五年間」とする。

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