法改正トピック|2020年民法改正(令和2年4月1日施行)

💼 「善意の買い取り」が仇となる日
「どうしても今月末の資金が足りないんだ。頼む、助けてくれないか」
知人のA社長から泣きつかれた金子社長(仮名)。見捨てることもできず、A社が取引先であるB社に対して持っている売掛債権を買い取る形で、数百万円の資金を融通しました。
しかし後日、金子社長がいざB社に支払いを求めると、冷酷な言葉が返ってきました。
「うちとA社の基本契約書には『債権譲渡禁止特約』が入っています。だから、あなたには1円も払えませんよ。」
契約書の隅々まで確認していなかった自分の脇の甘さ。善意で手を差し伸べたはずが、一転して大切な資金が焦げ付く恐怖に、金子社長は目の前が真っ暗になりました。
⚖️ 法律解説:原則と例外の「180度逆転」
かつての旧民法では、このような「譲渡制限特約」がある場合、特約に違反した債権譲渡は「原則として無効」とされていました。
譲り受けた側が「特約を知らなかったこと(善意無重過失)」を自ら証明しない限り、お金は取れなかったのです。
しかし、これでは中小企業の迅速な資金調達(ファクタリングなど)の大きな障壁となってしまいます。
そこで、現在の改正民法(466条2項)ではルールが180度逆転し、「譲渡制限特約があっても、債権譲渡は有効」となりました。
もちろん、債務者(B社)を保護する仕組みとして、買い取った側が特約を「知っていた(悪意)」か、「重大な過失によって知らなかった」場合は、支払いを拒むことができます(同条3項)。
しかし、ここが最大のポイントです。この「悪意・重過失」を証明する責任は、支払いを拒みたい債務者(B社)側にあります。
単に「基本契約書を確認しなかった」程度の不注意が、直ちに「重過失」と評価されるとは限らず、今回のようなケースでは回収の見込みが十分に立ちます。
万が一、相手が正当に支払いを拒んできた場合でも、まだ強力なカードがあります。
金子社長自らがB社に対して「A社(譲渡人)に支払うよう」催告し、相当期間内に払われなければ、B社の履行拒絶権は消滅します(民法466条4項)。
🐯 弁護士 佐藤嘉寅(とら先生)の視点
「契約書を確認していなかったお前が悪い」と開き直るB社の言い分は、今の法律では通用しません。金子社長は、法的には高い確率で救済されるでしょう。
しかし、実務家としてあえて厳しいことを申し上げます。
「重過失の証明ハードルが高いから大丈夫」という認識は、今回は正しい。
しかし、それは法律が運良く味方をしてくれた結果であって、経営判断としての正解ではありません。
最初から契約書を確認する手間を惜しむ経営者は、いずれ必ず別の致命的なトラブルで足元をすくわれます。
📌 まとめ
債権譲渡による資金調達は、民法改正により大きく道が開かれました。
しかし、相手の言い分を鵜呑みにして引き下がるか、法のロジックで突破できるかは、経営者の知識と準備次第です。
債権回収は、「ただ待つ者」ではなく、「法の武器を正しく準備した者」にのみ道が開かれます。
焦げ付きの不安がある場合は、手遅れになる前に専門家へご相談ください。
文書作成者
佐藤 嘉寅
弁護士法人みなとパートナーズ代表
プロフィール
平成16年10月 弁護士登録
平成25年1月 弁護士法人みなとパートナーズを開設
得意分野:企業間のトラブル、債権回収全般、離婚、相続、交通事故、刑事弁護、サクラサイト被害などの消費者問題にも精通

お気軽にお問い合わせください。03-6206-9382電話受付時間 9:00-18:00
[土日・祝日除く ]
メールでの問合せは全日時対応しています

