Man in a dark suit and striped tie sits on a rainy night street, with a woman in a beige trench coat holding his arm affectionately, blurred city lights in the background.

🥀 「妻とは家庭内別居だと言っていたのに……」届いた一通の内容証明

「うちはもう何年も会話がない。完全に家庭内別居で、離婚の話も出てるんだ……」
飲み会の帰り道、上司は寂しそうにそうこぼしました。

「もう終わっている家庭」なら、私が彼を癒やしても誰の迷惑にもならない。
そう思って関係を持った仁美さん(仮名・20代)。彼からは「妻とは離婚に向けて話し合っているから待っていてほしい」と言われ続け、その言葉を信じて2年が経ちました。

しかしある日、仁美さんのもとに突然、見知らぬ法律事務所から内容証明郵便が届きます。
そこには「私の夫との不貞行為に対する慰謝料として、300万円を請求します」という、彼の妻からの冷酷な文面が並んでいました。

仁美さんはパニックになりながらも、怒りが湧いてきました。
「私は悪くない。だって彼は『離婚する』と言っていたし、夫婦関係はもう破綻していたはずでしょ? 慰謝料なんて絶対に払いません!」

「私は悪くない」そう言い切りたい気持ちは、分かります。
しかし、破綻していたとの言い分が、法律上まかり通るのでしょうか?

⚖️ 慰謝料請求の限界:免責される「2つの例外」

仁美さんの「私は悪くない」という主張。実は、場合によっては認められることもあります。
不倫(不貞行為)は、平穏な夫婦関係を壊す「不法行為」であり、原則として慰謝料の支払い義務が生じます。
しかし、例外的に慰謝料の支払いを免れるケースが2つ存在します。実務上、請求された側の多くがこのどちらか(または両方)を主張して反論してきます。

免責の例外内容
善意無過失相手が既婚者だと知らず、かつ「知らなかったことに落ち度がない」場合。
婚姻関係の破綻不貞行為の時点で、客観的に見て夫婦関係がすでに修復不能な状態だった場合。
善意無過失について

「独身だと騙されていた」ケースです。
ただし、単に「知らなかった」だけでは足りません。
年齢、休日の過ごし方、職場での様子などから「普通なら既婚者だと疑うべき事情」があったのに確認を怠れば、「過失あり」と判断される可能性が高いです。

婚姻関係の破綻について

最高裁判所(平成8年3月26日判決)が認めたルールです。
慰謝料とは「平穏な家庭を壊された苦痛」への賠償です。つまり、すでに壊れている家庭であれば、法的に守るべき利益がないという理屈です。

💥裁判所の現実:「同居中の破綻」は実務上極めてハードルが高い

では、仁美さんのように「彼から破綻していると聞いていた」と言えば、慰謝料を免れるのでしょうか?
実務の現実は、そんなに甘くありません。重要なのは、本人の「主観」ではなく、「客観的な状態」です。

最近の裁判例(横浜地裁川崎支部など)を見ても、裁判所は「同居している夫婦の破綻」を認めることに極めて慎重です。
法廷では、次のように一蹴されるケースがほとんどです。

「同じ屋根の下で暮らし、家計を共にしている以上、婚姻関係が客観的に破綻していたとは認められない。既婚男性の『妻とは終わっている』という言葉だけを軽信したことには過失がある」

結果として、破綻の主張は退けられ、相当額の支払いを命じられます。
例外が認められるのは、「長期間の別居」や「離婚調停中」など、誰の目にも明らかな客観的事実があるケースに限られるのが現実なのです。

📘 彼は“もう終わった”と言った──「不貞行為と破綻の認識」

✨ グラスの向こうに バーカウンターの薄明かりのなかで、彼はグラスをゆっくり回していた。「うちはね、もう何年も会話がないんだ。完全に家庭内別居。子どもももう成人したし、離婚の話も出てるくらいで──」 彼の声 […]

🐯 弁護士 佐藤嘉寅(とら先生)の視点

不倫かどうかではなく、「婚姻が守られるべき状態にあったか」が問われます

「先生、彼に騙されていたんです……」
慰謝料を請求され、相談に来られる女性から、この言葉を何度聞いたかわかりません。
裁判所はあくまで「客観的に見て、法的に守るべき婚姻状態が存在したか」という軸で判断します。

請求された方へ

既婚男性の「妻とは終わっている」は、法廷では、ほぼ通用しない“常套句”です。言葉を信じた代償は、あなた自身に降りかかります。信じた言葉よりも、証明できる事実だけが、法廷では評価されます。
反論だけで裁判を長引かせるより、早期に専門家を入れて和解交渉に切り替える方が、傷を浅く済ませられることが多いです。

請求する妻(夫)の方へ

相手から「破綻していた」と言われても、焦る必要はありません。
同居し、食事や生活費を共にしていた「実績」さえ証明できれば、言い逃れは封じられます。淡々と証拠を積み上げましょう。

不倫トラブルは感情が激しくぶつかり合うからこそ、客観的な事実が勝敗を分けます。一人で悩まず、まずは法の専門家を頼ってください。

🌿 次回予告

「親権は母親が絶対有利。男には無理だ」
そんな絶望的な常識を前に、子供との生活を諦めかけているお父さんたちへ。
次回は、裁判所が“母親優先の原則”よりも重く見る、『父親が親権を勝ち取るための方法』について解説します。

文書作成者

佐藤 嘉寅

弁護士法人みなとパートナーズ代表

プロフィール

平成16年10月 弁護士登録
平成25年1月 弁護士法人みなとパートナーズを開設
得意分野:企業間のトラブル、債権回収全般、離婚、相続、交通事故、刑事弁護、サクラサイト被害などの消費者問題にも精通

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