極度額のない個人根保証契約は無効に!

🧩 家族の顔が浮かんだ夜
「なあ、頼むよ。お前しかいないんだ。」
夜の居酒屋。久しぶりに再会した大学時代の親友が、ジョッキを置いて身を乗り出してきた。
「保証人になってくれないか。」
一瞬、耳を疑った。
笑いながら語っていた学生時代の思い出話が、急に重たく変わる。
「ちょっとした事業資金なんだ。大きな額じゃない。ちゃんと返すから。」
親友の目は真剣そのものだ。
――もし返せなかったら、どうなる?
その瞬間、妻の顔が浮かんだ。
小学校に通い始めたばかりの息子の笑顔。
習い事に送り迎えする妻の背中。
あの穏やかな日常が、借金で一瞬にして崩れるかもしれない。
「昔からの仲だろ?困ったときは助け合うって、あの頃も言ってただろ。」
親友は笑顔を作ってみせたが、その声には焦りが混じっていた。
ジョッキの泡が静かに消えていく。
友情を取るか、家族を守るか。
「友情」と「責任」の天秤が、重く揺れていた。
❓ 保証人の怖さ
昔から「保証人にはなるな」という言葉があります。
たとえ親しい間柄でも、安易に保証人になれば、借主が返済できなくなったときに代わりに全額を払う義務が発生します。
特に「根保証契約」は要注意。これは、一度の借金ではなく、継続的な取引で発生する不特定の債務をすべて保証する契約です。
「1回だけなら」と思っても、実は何度も借り入れを重ねていて、気づけば巨額の債務に巻き込まれることもありました。
📘 改正民法でのルール変更
こうした危険を防ぐため、2020年の民法改正で大きなルール変更がありました。
💡 ポイント①:極度額のない契約は無効
極度額(保証人が最大で負担する金額)を定めていない個人根保証契約は無効になりました。
金額の上限が必ず書面で定められていなければ、契約自体が成立しません。
💡 ポイント②:元本確定期日
貸金取引を対象とする「個人貸金等根保証契約」では、元本確定期日を設ける必要があります。
契約から5年を超える設定は無効、定めがなければ3年で自動的に確定します。
一方で、賃貸借契約など他の根保証にはこのルールは広がらず、契約終了まで保証が続く点に注意が必要です。
🔍 元本が確定するきっかけ
さらに、元本が確定する出来事(確定事由)も法律で定められました。
- 共通:保証人が破産・死亡した場合、または保証人財産への強制執行があった場合
- 貸金取引に限り:主債務者が破産したり、財産に強制執行がされた場合にも確定
つまり、借主や保証人の経済的事情に応じて「保証の区切り」がつけられる仕組みになっています。
✍️ まとめ ― 安易に保証人にならないために
- 極度額のない個人根保証契約は無効。必ず上限金額を確認すること。
- 貸金取引では「元本確定期日」のルールもあり、無制限に責任を負うことはなくなった。
- それでも保証人は大きなリスク。友人や家族の頼みでも、内容を確認せずに引き受けるのは危険。
👉 保証契約は「友情の証」ではなく、人生を左右する重い法的責任です。
もし保証を頼まれたら、まずは冷静に契約内容を確認し、少しでも不安があれば専門家に相談してください。
文書作成者
佐藤 嘉寅
弁護士法人みなとパートナーズ代表
プロフィール
平成16年10月 弁護士登録
平成25年1月 弁護士法人みなとパートナーズを開設
得意分野:企業間のトラブル、債権回収全般、離婚、相続、交通事故、刑事弁護、サクラサイト被害などの消費者問題にも精通

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