【詐害行為取消】転得者が代物弁済で受領したベンガル猫、詐害行為取消されるとどうなる?代物弁済で消滅した受益者に対する貸金債権は復活するの?
私は、友人Cに200万円を貸していたのですが、最近、CがBの飼っていたベンガル猫を50万円で購入したんです。私はBとも仲がよく、Bが借金で首が回らなくなっていることを知っていました。また、Cは、私がBの飼っているベンガル猫をずっと欲しいと言っていたので、きっと私なら高く買ってくれるだろうと思ったのでしょう。Bは私にベンガル猫を200万円の借金の代物弁済として欲しいというので、いったんは断ったんですが、やはりすごくかわいい猫なので了承してしまいました。しかし、Aから、詐害行為取消の裁判を起こされて、ベンガル猫を引き渡せと言われています。私は、応じないといけないのでしょうか。その場合、私がCに貸し付けた200万円はどうなってしまうのでしょうか。
仮に、平井さんに対する詐害行為取消が認められるとした場合ですが、詐害行為取消は、Aと平井さんとの間、また、債務者Bとの間で効力が生じます。そのため、Cは無関係であり、代物弁済の効力は否定されませんので、Cに対し、200万円の返済を求めることはできません。この場合、425条の4により、受益者CのBに対する反対給付の請求権である50万円の限度で、Bに対して返還請求権を行使できます。ただ、実際に、Bから回収できるかは微妙でしょう。残念ながら、貸金の回収は難しい事案であると思います。
転得者に対する詐害行為取消請求
転得者に対する詐害行為取消請求が認められるか否かは、まず、債権者が受益者に対して詐害行為取消請求ができることが前提となっているのは、424条の5の解説で述べたとおりです。
そのため、例題の場合も、Cが、Bの詐害行為について知らなければ、問題ありません。
しかし、CもBの友人であり、Bが、借金で首が回らなくなっていることを知っている可能性があります。
その場合には、BC間のベンガル猫の売買契約が、Aによる詐害行為取消請求の対象になる場合もありえます。
仮に、そうなった場合、転得者が、Bの詐害行為を知っていたのか否かが問題となります。
本件では、Bが借金で首が回らなくなっていることを知っていたことから、詐害行為取消が認められる可能性はあるでしょう。
詐害行為取消請求を受けた転得者の権利
問題は、詐害行為取消請求が認められたとき、質問者の200万円の貸付金債権が復活するか否かです。質問者とすれば、ようやく手に入れたベンガル猫の引渡しをAから迫られ、ベンガル猫を代物弁済として受領したため200万円の貸付金債権も消滅してしまうかもしれません。
この点、詐害行為取消の効果は、Aと質問者との間、Bと質問者との間にのみ生じ、Cとの間には生じませんから、Cの代物弁済は有効のままです。
よって、質問者は、Cに対して、200万円を返せとは、もはや言えないということです。
しかし、このような結論は、質問者にとって酷です。
そこで、法は、次のような場合に、転得者による一定の権利の行使を認めました。
債務者がした行為が転得者に対する詐害行為取消請求によって取り消されたとき
①第四百二十五条の二に規定する行為が取り消された場合
⇒その行為が受益者に対する詐害行為取消請求によって取り消されたとすれば同条の規定により生ずべき受益者の債務者に対する反対給付の返還請求権又はその価額の償還請求権
②第四百二十五条の三に規定する行為が取り消された場合(第四百二十四条の四の規定により取り消された場合を除く。)
⇒その行為が受益者に対する詐害行為取消請求によって取り消されたとすれば第四百二十五条の三条の規定により回復すべき受益者の債務者に対する債権
③但し、①②ともに、転得者がその前者から財産を取得するためにした反対給付又はその前者から財産を取得することによって消滅した債権の価額を限度
相談事例の場合
結局、相談事例の場合、質問者は、受益者Cの債務者Bに対する反対給付の請求権である50万円の返還請求権を、Bに対して行使できますが、その限度に留まるということです。
加えて、元々、Bは無資力ですから、事実上、50万円の債権回収も極めて困難と言わざるを得ません。
詐害行為取消制度は、債権者にとっては有用な制度ですが、受益者、転得者にとっては、いつ法的な地位が覆されるか分かりませんので、取引をする際には、十分に、取引の相手方を見極める必要があります。
今回の質問者はこちらの方
株式会社LIFAA代表取締役社長の平井太郎さん
はじめてお会いしたのは、10年前。以来、仲良くさせていただいています。
IT分野で大成功しているのに、まったく偉ぶったところのない太郎さん。とても素敵な社長さんです。
小雨の降る中、品川駅から大田文化の森まで歩いたのは良い思い出。
なんでそんなことをすることになったのか覚えていませんが、多分酔って気持ちよくなっていたのでしょう(笑)
※ 質問内容は架空のものです。
平井 太郎
株式会社LIFAA 代表取締役社長
職人からコンサルタントまで
品川区を拠点に、ITに関連することなら何でも、様々な業種へ事業展開しており、医療、イベント、公益事業、健康、建築などなど、多業種のお客様への事業サポートを行っております。
広島県尾道市生まれ、関西の大学を経て上京20年目。
趣味は猫と料理。
動物が大好きすぎて、何か動物のビジネスが展開出来ないか常に熟慮しております。
文書作成者
佐藤 嘉寅
弁護士法人みなとパートナーズ代表
プロフィール
平成16年10月 弁護士登録
平成25年1月 弁護士法人みなとパートナーズを開設
得意分野:企業間のトラブル、債権回収全般、離婚、相続、交通事故、刑事弁護、サクラサイト被害などの消費者問題にも精通
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