
✍️ 「まだ終わっていない」
事故から、もう5年が経とうとしていた。
赤信号を無視した車に跳ねられ、足に後遺障害が残ったあの日から。
リハビリに通い続け、ようやく症状が「固定」と診断されたとき、私は改めて現実を突きつけられた。
そこから時効が進行する――損害を知り、加害者もわかっている以上、3年が経てば請求はできなくなる。
「もう、間に合わないのかもしれない」
そう思った瞬間、胸の奥に広がったのは深い諦めと、言いようのない悔しさだった。
しかし、弁護士が差し出した資料に目を落としたとき、息を呑んだ。
「民法改正 時効が3年から5年に延長」
「……え?」
震える手で文字を追った。
3年ではなく、5年。つまり、私の権利は、まだ生きている。
――終わっていない。
あの日から続く闘いを、時効という壁に遮られることは、もうない。
私は拳を固く握りしめた。
「ここからだ。泣き寝入りはしない」
後遺障害が残ろうとも、私の権利は奪われない。
それを必ず、この手で示すのだ。
❓ 知らないと損!2020年民法改正と不法行為の時効
「まさか自分が…」と思うような事故や医療ミス、あるいは長い年月を経て現れる健康被害。
そんなとき、「請求できる期間を過ぎてしまったから仕方ない」と泣き寝入りしていませんか?
実は2020年(令和2年)の民法改正で、不法行為に基づく損害賠償請求のルールが大きく変わりました。
被害者にとって権利を守りやすくなる内容であり、ぜひ知っておきたいポイントです。
📘 事故や怪我の時効が「3年」から「5年」へ延長!
これまでの法律では、交通事故や医療過誤など、身体や命に関わる被害を受けた場合、
「損害と加害者を知った時から 3年以内」に請求しなければ時効により権利が消滅していました。
改正後は、この期間が 5年 に延長されました。
怪我の治療やリハビリ、心の回復には時間がかかります。
被害者が慌てて示談や裁判を急ぐ必要はなくなり、落ち着いて準備を整えたうえで、適切なタイミングで賠償請求を行えるようになったのです。
🔍 「20年で強制終了」のルールが変わった
旧民法では、不法行為から 20年が経過すると自動的に権利が消滅する「除斥期間」 がありました。
そのため、たとえ重大な被害が20年以上経って発覚しても、請求できないという理不尽なケースが生じていました。
改正後は、これが「消滅時効」と明記され、裁判を起こすなどの手続きによって時効を止めることが可能になりました。
たとえば、アスベスト被害のように、加害行為から数十年後に症状が現れる場合でも、被害者が権利を守れる余地が広がったのです。
🧩 債務不履行との関係にも注意
契約上のトラブルでは、「不法行為」と「債務不履行」が競合することがあります。
例えば、会社が従業員に対する安全配慮義務を怠った場合などです。
- 不法行為 → 原則「5年/20年」
- 債務不履行 → 原則「5年/10年」
状況によってどちらを根拠にするかで、請求可能な期間が変わることもあります。
実務上はこの点に注意が必要です。
💡 まとめ
- 身体・生命に関する損害賠償の時効が「3年 → 5年」に延長
- 「20年経過で自動消滅」というルールがなくなり、時効を止めることが可能に
- 不法行為と債務不履行の競合時には、適用される時効が異なる場合あり
この改正は、被害者の権利を守りやすくするための大きな一歩です。
もし事故や医療ミスなどの被害を受けたときは、「まだ時効が過ぎていないか」 を必ず確認してください。
そして、一人で抱え込まずに、早めに弁護士など専門家に相談することをおすすめします。
泣き寝入りせず、正当な権利をしっかり守りましょう。
文書作成者
佐藤 嘉寅
弁護士法人みなとパートナーズ代表
プロフィール
平成16年10月 弁護士登録
平成25年1月 弁護士法人みなとパートナーズを開設
得意分野:企業間のトラブル、債権回収全般、離婚、相続、交通事故、刑事弁護、サクラサイト被害などの消費者問題にも精通

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