【詐害行為取消】債権者が過大な代物弁済を受けると詐害行為になるのか?特定の債権者に対する担保の供与等は?

三代勝之さん

弊社は、取引先Aから、ドローン空撮の業務を定期的に受注していたんですが、最近、代金の支払が期限に遅れ始めていました。私も、不安になり、1週間前が支払い期限だったので、Aに代金30万円を取り立てに行きました。Aは、月末で他にも支払いがあるから待ってほしいと頼んできましたが、私は、Aと話し合って、事務所にあったAの趣味の骨董品の壺を代物弁済として受領しました。ところが、今日、Aの取引先Bから、弊社に対して、私が代物弁済を受けた行為が、詐害行為にあたるとして、通知書が届きました。弊社が受けた代物弁済は取り消されてしまうのでしょうか。

三代さんが、Aから骨董品の壺を回収した時に、Aが支払い不能状態だったかが問題となります。支払い不能状態であれば、Aは、三代さんに壺を渡す行為が、他の債権者を害すると分かるし、三代さんも、他の債権者がいることをAから聞いているから、Aと通謀していると評価される可能性があります。また、その壺がいくらの価値があるかによっても、結論は変わってくるでしょう。壺の価値が、30万円よりも過大な場合は、過大な部分について詐害行為取消が認められる可能性があります。

特定の債権者に対する担保の供与等の特則

当事者間の契約で弁済義務を負っていて、弁済期が到来している場合、債務者が債権者に対し、弁済義務を履行することが問題となるのはおかしいです。
しかし、債務者が無資力で、他の債権者を害する意思をもって、特定の債権者と通謀して、弁済をした場合には、その債権者を保護する必要性も低いため、旧民法下の判例では、詐害行為取消の対象になるとされていました。

確かに、そう言われると詐害行為として取り消されてもやむを得ないような気もしますが、債権者として、自身の債権の弁済を受けただけなのに、取り消されるのも不合理です。

また、破産法は、債権者に対し、否認権が行使されることへの萎縮効果があることから、債務者のした既存の債務についての担保の供与または債務の消滅に関する行為は、原則として支払い不能前の効力は否定されないことにしています。

支払い不能と債務者・受益者間の通謀詐害意図

そこで、改正民法では、破産法とのバランスをとり、下記のとおり、②支払い不能の要件を、破産法162条1項1号イと同様に要求しました。
但し、破産法は、債権者が、債務者が支払い不能であることを知っていたことを要件としているのに対し、民法の詐害行為取消では、支払い不能であることの認識ではなく、債務者と受益者の間に通謀詐害意図があることを要求している点が異なります。

①債務者がした既存の債務について担保の供与又は債務の消滅に関する行為をしたこと(424条の3第1項本文) 
②債務者が支払不能のときに、①の行為をしたこと(同条第1項第1号)
③債務者と受益者の間に通謀詐害意図があること(同条第1項第2号)

債務者の義務に属さない場合の特則

債務者の偏波行為が、債務者の義務に属さず、またはその時期が債務者の義務に属しない行為、例えば、弁済期未到来の債務については、下記のとおり、支払い不能になる前の30日以内に行われた場合でも、詐害行為取消請求ができることとされた。

①債務者がした既存の債務について担保の供与又は債務の消滅に関する行為をしたこと(424条の3第1項本文) 
②①の行為が、債務者の義務に属せず、又はその時期が債務者の義務に属しないものであること(424条の3第2項本文)
③債務者が支払不能になる前30日以内に、(②の要件を満たす)①の行為をしたこと(同条第2項第1号)
④債務者と受益者の間に通謀詐害意図があること(同条第1項第2号)

(特定の債権者に対する担保の供与等の特則)
第四百二十四条の三 債務者がした既存の債務についての担保の供与又は債務の消滅に関する行為について、債権者は、次に掲げる要件のいずれにも該当する場合に限り、詐害行為取消請求をすることができる。
一 その行為が、債務者が支払不能(債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態をいう。次項第一号において同じ。)の時に行われたものであること。
二 その行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること。
2 前項に規定する行為が、債務者の義務に属せず、又はその時期が債務者の義務に属しないものである場合において、次に掲げる要件のいずれにも該当するときは、債権者は、同項の規定にかかわらず、その行為について、詐害行為取消請求をすることができる。
一 その行為が、債務者が支払不能になる前三十日以内に行われたものであること。
二 その行為が、債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図をもって行われたものであること。
参考 破産法(特定の債権者に対する担保の供与等の否認)
第百六十二条 次に掲げる行為(既存の債務についてされた担保の供与又は債務の消滅に関する行為に限る。)は、破産手続開始後、破産財団のために否認することができる。
一 破産者が支払不能になった後又は破産手続開始の申立てがあった後にした行為。ただし、債権者が、その行為の当時、次のイ又はロに掲げる区分に応じ、それぞれ当該イ又はロに定める事実を知っていた場合に限る。
イ 当該行為が支払不能になった後にされたものである場合 支払不能であったこと又は支払の停止があったこと。
ロ 当該行為が破産手続開始の申立てがあった後にされたものである場合 破産手続開始の申立てがあったこと。
二 破産者の義務に属せず、又はその時期が破産者の義務に属しない行為であって、支払不能になる前三十日以内にされたもの。ただし、債権者がその行為の当時他の破産債権者を害することを知らなかったときは、この限りでない。

過大な代物弁済の特則

過大な代物弁済、つまり、三代さんの会社から、Aに対する請求権が30万円なのに、100万円の価値を有する壺を代物弁済として受領した場合、Bを含む他の債権者を害する一方、三代さんの会社が不当に利益を得ることになります。
そのため、改正民法では、「過大」な部分については、詐害行為取消権の基本である424条の要件で、取り消すことができることとしました。

(過大な代物弁済等の特則)
第四百二十四条の四 債務者がした債務の消滅に関する行為であって、受益者の受けた給付の価額がその行為によって消滅した債務の額より過大であるものについて、第四百二十四条に規定する要件に該当するときは、債権者は、前条第一項の規定にかかわらず、その消滅した債務の額に相当する部分以外の部分については、詐害行為取消請求をすることができる。

とら先生ぷちコラム
前記したとおり、改正民法では、424条で詐害行為取消が認められる場面を広く認めつつ、それを抑制する形で、424条の2以下を定めています。
相談事例では、三代さんの会社のAに対する請求権は、支払期限が来ていました。そのため、当然、支払いを受けることができそうです。この時、詐害行為取消が認められるための要件として、債務者であるAが支払い不能であることが要求されています。支払い不能は、客観的な要件ですが、実務的には、手形不渡りや、弁護士からの介入通知など分かりやすい状況の際に認められます。
もちろん、支払い不能は、実務的に分かりやすい状況以外にも、理論上は認められるものと思いますが、①支払い不能と②債務者と受益者の通謀詐害意図は、詐害行為取消を主張する債権者が主張立証責任を負うことになります。
よって、既存の債務についての担保の供与又は債務の消滅に関する行為を取り消すことは、若干困難ではないかと思います。
他方、例題のように、代物弁済を受けた壺の価値が、請求債権額に比して過大である場合は、過大な部分について、424条で詐害行為取消が認められることになります。
 
 
 

今回の質問者はこちらの方

ReVision株式会社の代表の三代勝之さん
当ブログを応援する会事務局長を名乗っていただいているとおり、ブログ開設以来、様々な有益なアドバイスをくれた人です。
若いのにしっかりしていて、正直、頭があがりません。
そんな三代さんが運営するReVision株式会社は、ハイクオリティーな空撮映像を盛り込んだプロモーション映像制作から、ドローンを活用した外壁や太陽光パネルの点検などの非破壊検査まで行うドローン空撮事業をはじめ、ドローンメディア運営事業、ドローンAI事業、ドローンプロモーション事業まで、ドローンにかかわるビジネスを展開しています。
ドローンと言えばReVision株式会社、ドローンに関することは、三代勝之さんにご相談ください。

※ 質問内容は架空のものです。

三代 勝之

当ブログを応援する会 事務局長

ReVision株式会社 代表取締役

ドローン、飛ばしてます

ドローン業界で小さなベンチャー企業として渋谷区を拠点に、大阪、名古屋でサービス展開しています。
官公庁をはじめ、TV局、広告代理店、建設などの現場で空撮業務を行い、ドローンのとある分野で40代でGNI(GNP)の1%向上に寄与すべく開発を進めています。

愛知生まれ、サンノゼ経由、北海道の大学を経て上京11年目。
趣味は素潜りと麻雀。
47都道府県の雀荘放浪打ちも目標に掲げる。
 

Profile Picture

お気軽にお問い合わせください。03-6206-9382電話受付時間 9:00-18:00
[土日・祝日除く ]
メールでの問合せは全日時対応しています

お問い合わせ