【改正民法】中間利息控除と法定利率の変動

法定利率と中間利息控除

中間利息控除という言葉は、一般の方には、あまりなじみがないものかもしれません。
中間利息控除とは、将来受け取るべきお金を前払いしてもらう場合に,将来にわたって発生するはずの利息分を差し引くこと言います。
具体例として分かりやすいのが、交通事故の後遺障害のため、労働能力が喪失したことによって将来得られたはずの収入が得られなくなったことによる逸失利益の損害についての中間利息控除です。
逸失利益の損害賠償請求をした場合、5年後、10年後に生じるはずの損害額を、現在、受領することになります。
本来、お金は持っているだけで利息が発生するとされているので、将来生じる金額全額を、現時点で、そのままの受領すると、もらいすぎになるので、現在価値に割り引いて計算しましょうという考えになります。
実際、現在の超低金利時代で、過大な中間利息を控除するのもどうかなという印象はありますが。

この点、旧民法下では、明文規定はありませんでしたが、判例上、法定利率の5%をもとに、中間利息控除の計算をしていました。
これが、改正民法では、中間利息控除をするときは、「その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする」と定めて、明文化しました(417条2項)。
不法行為による損害賠償請求についても、同条項が準用されています(722条1項)。
そして、法定利率は、当面3%とされましたから、中間利息は、3%で計算されることになったのです。

(中間利息の控除)
第四百十七条の二 将来において取得すべき利益についての損害賠償の額を定める場合において、その利益を取得すべき時までの利息相当額を控除するときは、その損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率により、これをする。
2 将来において負担すべき費用についての損害賠償の額を定める場合において、その費用を負担すべき時までの利息相当額を控除するときも、前項と同様とする。

(損害賠償の方法、中間利息の控除及び過失相殺)
第七百二十二条 第四百十七条及び第四百十七条の二の規定は、不法行為による損害賠償について準用する。

逸失利益の損害額の増大

中間利息控除は、交通事故による後遺障害の逸失利益を請求する場面、安全配慮義務違反に基づく逸失利益を請求する場面で問題となりえますが、中間利息控除の法定利率が、5%から3%となるため、逸失利益額は、単純に増大します。
5年分の計算式は、下記のとおりですが、これが10年、20年分となれば、さらに差額は増大することになります。

1年  1,000,000÷ 1.05= 952,381
2年  1,000,000÷ 1.05÷ 1.05 =907,029
3年  1,000,000÷ 1.05÷ 1.05÷ 1.05= 863,838
4年  1,000,000÷ 1.05÷ 1.05÷ 1.05÷ 1.05= 822,702
5年  1,000,000÷ 1.05÷ 1.05÷ 1.05÷ 1.05÷ 1.05 =783,526
合計 4,329,477

1年  1,000,000÷ 1.03= 970,874
2年  1,000,000÷ 1.03÷ 1.03= 942,596
3年  1,000,000÷ 1.03÷ 1.03÷ 1.03= 915,142
4年  1,000,000÷ 1.03÷ 1.03÷ 1.03÷ 1.03= 888,487
5年  1,000,000÷ 1.03÷ 1.03÷ 1.03÷ 1.03÷ 1.03= 862,609
合計 4,579,707

中間利息の控除については、ライプニッツ係数、ホフマン係数を用いて行いますが、各保険会社が、ライプニッツ係数表を、インターネット上に公表していますので、ご参照ください。
参考 ライプニッツ係数表(損害保険ジャパン作成)

中間利息控除の基準時

中間利息控除の規定は、附則17条2項により、令和2年4月1日より前に生じた将来において取得すべき利益又は負担すべき費用についての損害賠償請求権については、適用しないとされています。

(債務不履行の責任等に関する経過措置)
第十七条 (省略)
2 新法第四百十七条の二(新法第七百二十二条第一項において準用する場合を含む。)の規定は、施行日前に生じた将来において取得すべき利益又は負担すべき費用についての損害賠償請求権については、適用しない。

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